研究課題
糖尿病は歯周病の発症および進行に関与していることが疫学的および分子生物学的に示唆されているが、糖尿病の歯周病に対する影響に関する詳細な機序に関しては、未だ不明な点が多々存在する。慢性的な高血糖状態は、色々な組織への終末糖化産物(AGE)の沈着を引き起こし、AGEは起炎物質として作用することで慢性的な微細炎症の発生に貢献すると共に歯周病の様な慢性炎症性骨破壊性の疾患の増悪に関与していると考えられている。今回、マウスマクロファージ細胞株であるRAW264細胞を用いて、0.01nMから10nMの濃度範囲に調整したAGEおよび25ng/mlのRANKLにより刺激を加え、糖尿病を想定した環境下におけるマクロファージの動態について検討した。各種濃度のAGEおよびRANKLを添加し、1日間培養後、BrdU化学発光キットを用いて細胞増殖能を検討した。AGEおよびRANKLの添加は、細胞増殖能に対して影響を与えなかった。2日間培養した場合でも同様の結果を得た。一方、上記濃度範囲の中で低濃度(0.03nM~0.3nM)のAGEとRANKLの添加は、RANKLのみの添加と比較し、5日後の多核破骨細胞形成を有意に促進するが、これはRAGEおよびTLR4受容体の働きを介しての作用であった。また、同様に低濃度のAGEとRANKLの添加は、RANKLのみの添加と比べ、5日後の破骨細胞の吸収活性(HAコーティングプレートを用いたpit assayによる評価)を有意に増強した。以上のことから、AGEは、マクロファージの増殖能には影響を与えないおよびRANKL誘導性のマクロファージから破骨細胞への分化を低濃度で増強する可能性が示唆され、糖尿病環境下における歯周病の炎症性骨破壊増強メカニズムの一端を示していることが考えられた。
3: やや遅れている
終末糖化産物の添加により、細胞の動態に変化を認めるが、濃度により反応性にバラツキを認めることおよび刺激能の弱さを認めることがあり、細部の条件設定に検討に時間を費やした。
研究計画を延長したことで、時間的猶予を得たため、大枠では纏まってきている実験成果に関する細部の詰めを行い、学会発表および論文投稿を行っていく予定である。
当該年度内に、当初予定していた実験および論文投稿が終了しなかったため、次年度使用額が生じた。
研究計画を延長し、次年度使用額によって試薬購入と論文投稿を賄う予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 5件) 図書 (2件)
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