研究課題/領域番号 |
26463155
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
篠田 壽 東北大学, 歯学研究科(研究院), 名誉教授 (80014025)
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研究分担者 |
木野 康志 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00272005)
千葉 美麗 東北大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (10236820)
清水 良央 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30302152)
高橋 温 東北大学, 大学病院, 助教 (50333828)
小坂 健 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (60300935)
鈴木 敏彦 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (70261518)
岡 壽崇 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 助教 (70339745)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 福島第一原発事故 / 歯 / Sr-90 / 内部被曝量 / ウシ |
研究実績の概要 |
福島第一原発事故旧警戒区域内で捕獲した被災牛、および岩手県内でと畜されたコントロール牛の下顎臼歯、計72本について、歯質中に含まれる放射性ストロンチウム(Sr-90)量を測定した。その結果、すべての歯にはSr-90が検出され、その濃度は8-831mBq/gCaの範囲内にあった。また、歯質中のSr-90濃度や比放射能値は、環境の空間線量率や土壌中のSr-90濃度に比例していた。同一個体内の歯についてみると、原発事故後に形成された歯には高いSr-90濃度や比放射能値が認められたのに対して、原発事故以前に形成された歯では、低い値を示した。これらの事実は、環境中のSr-90は(飲食物等を介して体内に入り)歯の形成期に歯質中にとり込まれ、そのまま歯質中に保持されることを示している。歯が形成される時期は既知であるので、歯質中のSr-90濃度は歯が形成される時期における個体の内部被曝量を示す重要な指標となり得ることが示された。一方、歯質中の放射性セシウム(Cs-137, Cs-134)についてみると、原発事故後に形成された歯と、事故以前に形成された歯との間に大きな濃度の差はなく、Sr-90のように主に歯の形成期に歯質中に取り込まれるという機序とは異なる可能性があると考えられた。 ヒト乳歯については、福島県歯科医師会との協力のもと、福島県内を中心に全国より4000本を超える歯を収集し、それらをバンク化している。それら乳歯の解析は、イメージングプレートやオートラジオグラフィーにより次年度より開始する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
被災動物(牛)の歯のSr-90濃度については測定を終了しているが、Cs-137, Cs-134の歯質内への移行や濃度分布については不明な点があり、現在解析中であるため。
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今後の研究の推進方策 |
歯質中のSr-90濃度の測定から、具体的な数値として、歯の形成期間中に体内に存在したSr-90の総量を算出し、内部被曝量を推測する。具体的には福島原発事故旧警戒区域内で捕獲した被曝ニホンザル、および野生アカネズミを用いて以下の手順により内部被曝量の推計モデルを構築する。①歯の比放射能値(Sr-90/Sr)の測定する、②体重から骨組織総重量の推測を行う。③骨組織中のSr安定同位体量の測定から骨中総Sr量を算出する、④歯から得られた非放射能値を骨組織にあてはめ、体内総Sr-90量(Srの99%は骨組織中に存在する)を推定する、⑤組織荷重係数と等価線量との積を求め、Sr-90による内部被曝の実効線量を推計する。上記の推測手順の妥当性について上記被災動物を用いて検証し、最終的には、ヒト乳歯を用いての内部被曝量の推測に結びつける。 また、収集したヒト乳歯について歯質中の放射性物質濃度をイメージングプレートを用いてスクリ-ニングし、高い値を示した歯については放射性ストロンチウムやセシウムの測定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
協同研究者として参加している別の科学研究費補助金や環境省からの委託研究費により本研究の実施にも必要な物品の購入費やその他の諸経費を使用することが可能であったため、研究計画を変えることなく、計画的に次年度に100万円弱の当該補助金を繰り越すことが可能となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度においては、被災動物の歯や骨、さらにヒト乳歯中の放射性物質の局在と分布を明らかにすることを実験計画の一部として予定しているが、そのための研究手段としてミクロのオートラジオグラフィーをもちることを計画している。このオートラジオグラフィーの実施にはオートラジオグラフィー用の感光乳剤が必要となるが、そのための経費として、50万円以上が必要であり、またオートラジオグラフィー実施中に環境放射線を遮蔽することが重要となるので、このために低バックグラウンドの鉛ブロックや鉄板が必要となる(30から40万円)。繰り越し経費は主にこれらのために使用することを予定している。
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