研究課題
「歯を用いた内部被ばく量の推定」本研究班では、福島県相双地区の山中において被ばくし、捕獲された野生ニホンザルの標本を多数保持している。それらの中で、歯を含む全身骨格を有している個体を用い、対象核種をSr-90 に限定し、歯に含まれるSr-90量のから個体の内部被ばく量(Sr-90に対する骨髄被ばく量)を推定するモデルを試作した。このモデルの適用により、ヒトをも含め歯を持つ様々な動物について、歯の形成期における個体の骨髄被ばく量を推定することが可能になったと考えられる。現在、福島県在住小児から収集した5,000本規模の乳歯について、イメージングプレート法(IP法)により内部被ばく量をスクリーニングする作業を行っているが、このIP法により高値を示した個体については、上記の手法を用いて骨髄被ばく量を推測することが可能と考えられる。「歯を用いた外部被ばく量の推定」放射線被ばくにより、歯質中には被ばく線量に比例して炭酸ラジカルが発生する。したがって被ばく線量と炭酸ラジカル量発生の関係をあらかじめ検量線として得ておけば歯質中の炭酸ラジカル量を測定することにより、この検量線から外部被ばく線量を直接測定することが可能である。歯質中のラジカルの測定は、ESR法(電子スピン共鳴法)を用いて行うが、これまでに行われてきたIAEA等のプロトコールに基づくESR法では感度が十分でないため(100-200mGy 以上)、今回の原発事故で問題となる低線量・慢性被ばく状況の把握には十分な感度を有していないのが現状であった。本研究では、測定ソフトの改良や試料調整法に改良を加え、その感度を10-20mGy 以下まで測定可能な技術として確立した。改良したこのESR法を用いて、現在、福島県在住小児より収集した乳歯について、歯から外部被ばくした量を推定する疫学調査を始めている。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Sci Rep
巻: 6 ページ: 24077
10.1038/srep24077
みちのく歯学会雑誌
巻: 47 ページ: 40-43