研究課題
平成28年度は、職域における口腔保健に関する実態を把握し、医療費削減に寄与できるような口腔保健推進からの健康づくりの方策を構築するため歯周病と関連する歯肉溝滲出液(GCF)の値と医療費および特定健康診査項目との関連について分析、検討し、第90回産業衛生学会で発表する内容の概要について記す。A社健康保険組合被保険者の40歳以上を対象とし、平成27年5月から11月に自記式質問票調査に回答および歯肉溝滲出液(GCF)検査(保健科学西日本)を受けた者とした。本検査では、lactoferrin(Lf)、alpha-1 antitrypsin(AT)、aspartate aminotransferase(AST)を評価した。各データは医療費(歯科医療費含まず、調剤料を含む、平成26年4月から27年3月集計)と連結して分析した。結果、分析対象は1916名(男性1490名、女性426名)で、男性3.9%、女性35.8%の参加率であった。男性は、Lf値・AT値・AST値の高群が低群に比べ平均値が有意に高かった項目は、医療費:Lf高群(1.58倍)・AT高群(1.77倍)・AST高群(1.78倍)、BMI、腹囲、HbA1cであった。また、Lf値・AT値の高群が低群に比べ平均値が有意に低かった項目はHDL-Cであった。女性は、Lf値高群が低群に比べ平均値が有意に高かった項目は、医療費(1.58倍)、BMI、腹囲、HbA1c、中性脂肪であった。結論として、40歳以上の対象者における、GCF値は、医療費およびメタボリックシンドローム指標となる腹囲、BMI、HbA1c、HDL-Cと関連がみられた。本調査から、歯周病予防はメタボリックシンドロームをはじめとする生活習慣病の予防のみならず、医療費への効果も期待できることが示唆された。
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