研究課題/領域番号 |
26463165
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山中 渉 九州大学, 歯学研究科(研究院), 共同研究員 (20726228)
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研究分担者 |
柴田 幸江 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30274476)
竹下 徹 九州大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50546471)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細菌叢 / 唾液 / 舌苔 / 次世代シーケンサー |
研究実績の概要 |
今年度は昨年度に引き続き、研究対象である“口臭を主訴として受診した患者の中で、歯周状態が比較的健康で舌苔の付着が顕著な患者”について、舌苔除去・採取および唾液採取を一定期間ごとに行った。当初、20名程度の被検者を予定していたが、現段階では予定人数に達しておらず、細菌叢の解析には至っていない。 次に、昨年度塩基配列を解読した84サンプル(14名の歯周病患者から歯周治療前後に採取した唾液、舌苔、縁上プラーク)について、詳細な解析を行った。昨年度の結果より、歯周治療前後とも、唾液と舌苔の細菌群集全体像の類似度は唾液と縁上プラークの細菌構成の類似度ならびに縁上プラークと舌苔の細菌構成の類似度に比べて有意に高いことがわかった。そこで、今年度は菌属レベルで各検体を比較したところ、唾液と舌苔ではともにStreptococcus、Prevotella、Veillonellaが優勢でその細菌構成は類似していた。一方、縁上プラークでは、Streptococcusは唾液や舌苔と同様に優勢であったが、Prevotella、Veillonellaは非常に少なく、Leptotrichia、Actinomyces、Corynebacteriumが優勢であった。Streptococcusの菌種レベルでは、唾液と舌苔ともに、Streptococcus salivarius、Streptococcus parasanguinis、Streptococcus mitisが優勢で、縁上プラークではStreptococcus mitisが優勢であった。菌属・菌種レベルにおいても唾液と舌苔は同様の細菌構成を示し、主要な菌種の治療前後における変化も類似していた。以上の結果から、唾液の細菌群集が舌苔由来である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は唾液の細菌構成が舌苔除去にともなって変化するか否かを調べることであり、その研究の実施には至っていない。しかしながら、本年度の研究結果より、菌属・菌種レベルにおいても唾液と舌苔は同様の細菌構成を示し、主要な菌種の治療前後における変化も類似していた。以上の結果から、唾液の細菌群集は主に舌苔由来であることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
まず、昨年に引き続き、本研究の対象者となり得る患者に対して口臭測定、舌苔付着状況の診査および舌苔除去を実施し、唾液および舌苔を採取する。昨年度採取したサンプルとともにビーズ破砕法を用いて細菌DNAを抽出し、それをテンプレートとしてタグ付きプライマーを用いて16S rRNA遺伝子のV1-V2領域を増幅する。増幅したアンプリコンの塩基配列を次世代シーケンサーである半導体シーケンサーを用いて決定する。これらの塩基配列について97%の相同性に基づき、Ribosomal Database Project II (RDPII)のデータベース中のデータと最も近似する細菌種に割り振ることでそれぞれのOTUが該当する細菌種を推定して、各マイクロバイオームの細菌構成を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度も本研究の対象者の確保が困難であったため、次世代シーケンサーによる塩基配列決定に予定していた金額を下回り、助成金の次年度への持ち越しが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は本研究の対象者の確保に努め、持ち越した助成金を次世代シーケンサーによる塩基配列の決定に要する費用等に当てる予定である。
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