研究実績の概要 |
Streptococcus mutansによる動脈硬化誘発に関与するgp-340の作用を調べるために、これまでヒト動脈内皮細胞(HAEC)、ヒト冠状動脈内皮細胞(HCAEC)を用いた。その結果、数株のS mutansは、HAEC におけるgp-340のmRNA発現レベルを上昇させたが、タンパクレベルでの発現は十分に確認できなかった。そこで本年度は、別種類の内皮細胞としてヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)を用いて同様の実験を行った。 1. S. mutans の各血清型(c, e, f)およびStreptococcus sobrinusの各血清型(d, g)2株ずつを用いて研究を行った。それぞれの菌株をHMVECとMOI=1で48時間共培養した後、HMVECを回収し、gp-340のmRNA発現レベルを調べた。その結果、対照に比してS. mutans OMZ175は12.4倍、MT3940は7.6倍、MT8148は6.7倍の発現を示し、S. sobrinus P1は5.8倍の発現を示した。 2.gp-340のmRNA発現レベルが高かったS. mutans OMZ175を用いて、HMVECと共培養した後、HMVECを回収し、gp-340のタンパク発現レベルを調べ、以下の結果が得られた。1)gp-340は分泌型のタンパクであるが、培養上清中にはほとんど検出されなかった。2)蛍光顕微鏡観察では、HMVEC細胞体に十分なgp-340のタンパク発現は認められなかった。しかし、S. mutans OMZ175菌体の凝集塊にgp-340の存在が認められた。3)菌体との共培養後、培地中の菌体を回収したところ、Dot blot法でgp-340の定量が可能であることが示された。 3.gp-340のmRNAとタンパクの発現レベルを経時的に調べたところ、48時間共培養後に、いずれも高い発現を示すことが認められた。 4.以上の結果から、S. mutansとの共培養によりHMVECにおけるgp-340の発現が誘導されることが、mRNAおよびタンパクレベルで認められた。
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