研究課題/領域番号 |
26463168
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
長田 恵美 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00304816)
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研究分担者 |
於保 孝彦 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50160940)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 内皮細胞 / 歯垢 / 動脈硬化 / サイトカイン |
研究実績の概要 |
ヒト歯垢は約700種の菌種から構成されるバイオフィルムである。口腔バイオフィルム細菌が感染源となって心臓、血管、肺、肝臓、脳、腎臓にしばしば急性あるいは慢性の炎症疾患が引き起こされることが臨床的に報告されており、口腔衛生の重要性が注目されている。今回我々は動脈硬化誘発の感染源と目したヒト歯垢そのものの動脈硬化誘発能を解明するために、ヒト歯垢細菌のヒト動脈内皮細胞 への侵入能力とサイトカイン産生誘発能を検討した。 まず、3人の臨床的に健康な口腔を有するポランティアから、パラフィンワックス咀嚼による刺激唾液の供与を受けた。この刺激唾液を遠心して沈殿物を回収し、これをPBSで洗浄することによって、ヒト歯垢細菌の回収とした。ヒト歯垢細菌をヒト動脈内皮細胞と5%二酸化炭素下で共培養する時の細胞数の比率、時間を検討し、歯垢細菌が内皮細胞を殺傷しないで共培養できる条件を設定した。歯垢細菌数と内皮細胞数を同量にして、共培養時間が4時間の場合は、歯垢細菌は内皮細胞を殺傷しなかった。次に、この培養条件で、歯垢細菌の内皮細胞への侵入能をantibiotic protection assay により検討したところ、3サンプルの歯垢細菌は、全てヒト動脈内皮への侵入能を有することが明らかになった。同条件で、それぞれの歯垢細菌をヒト動脈内皮細胞と共培養したところ、コントロールの刺激していない内皮細胞とくらべて、3サンプル中2サンプルのヒト歯垢細菌はヒト動脈内皮細胞から有意にIL-8の産生を、また3サンプル全てMCP-1の産生を誘導することが、イライザ法により明らかになった。 以上、ヒト歯垢細菌の内皮細胞における炎症反応誘発能が示されたことより、ヒト歯垢の動脈硬化誘発あるいは増悪への関与の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト歯垢細菌のヒト動脈内皮細胞への侵入能をantibiotic protection assay で検討するにあたっての条件設定、およびヒト歯垢細菌のヒト動脈内皮細胞におけるサイトカイン誘発能を調べるにあたっての、歯垢細菌が内皮細胞を殺傷しないで内皮細胞がサイトカインを産生し続けることができる培養条件の設定が困難であったため、予想よりも時間を要した。その結果、ヒト歯垢細菌の刺激によるヒト内皮細胞の炎症関連物質の検討が予定よりもやや遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はヒト歯垢細菌の刺激によるヒト内皮細胞における炎症関連物質産生の検討を引き続き行うことに加えて、刺激された内皮細胞におけるパターン認識受容体の発現をmRNAおよびタンパクレベルで調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒト歯垢細菌の刺激によるヒト動脈内皮細胞における炎症関連物質の発現解析が遅れた分、これに関わる消耗品の支出が次年度に繰り越された。また当初予定していた国際学会への参加をとりやめた分、旅費が次年度に繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用となった研究費は、継続して行うヒト歯垢細菌の刺激によるヒト動脈内皮細胞における炎症関連物質の発現解析に用いる。
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