研究課題/領域番号 |
26463173
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
新井 嘉則 日本大学, 歯学部, 教授 (20212607)
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研究分担者 |
松本 邦史 日本大学, 歯学部, 助教 (00508658)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 咀嚼 / 顎関節 / メタボリックシンドローム / OVX / マイクロCT |
研究実績の概要 |
初年度の予備実験の結果、加齢モデルとしてOVXしたラットを用い、Ⅰ通常食を与えた群と、Ⅱ粉食かつ咀嚼不全とした群では、体重や内臓脂肪および血液検査の結果に有意差は認められなかったが、顎関節の形態に大きな差が生じた。そこで、本年度はその変化の原因を探求すべく、本実験を行った。 本実験では、OVXをしない通常のSDラットを使用して、①通常食、②通常食で咀嚼不全、③粉食、④粉食かつ咀嚼不全の4群を8週間飼育し、マイクロCTを使用し、経時的に内臓脂肪と頭部の撮影を行った。さらに、OVXをした加齢モデルのSDラットを使用し、上記と同様に4群の実験を実施し、合計8群の実験を行った。そして、得られたマイクロCTの3次元的な画像データから、下顎頭の骨の密度および骨の体積の測定を行った。また、下顎頭部と下顎臼歯部の組織切片の作成を同時に行った。 その結果、OVXをしていない正常なSDラットでは、骨体積が②群がもっと大きく、次いで①、④、③となった。骨密では①が高く、②、③、④群では低下が認められた。これらの結果から、粉食にすることで、下顎頭が小さくなり、骨密度が低下することが明らかになった。 OVXをした加齢モデルでは、全体に下顎頭の体積がOVXをしない群に比較して低下し、加齢モデルによって下顎頭の大きさが小さくなることが明らかになった。また、粉食を食べる②と④群が、より下顎頭が小さくなった。骨密度は粉食を食べる②と④の群が上昇した。これは形態の変化から、比較的骨密度の小さい下顎頭部が吸収され、下顎頭頸部の骨密度の高い部分が残遺したためと考えられた。 これらの結果から、粉食を食べることと、加齢が顎関節の形態変化に大きな影響を与えることが明らかとなり、食事環境と加齢が非常に大きなファクターを持つことが示唆され、第28回日本顎関節学会総会および第56回日本歯科放射線学会学術大会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、咀嚼不全によって、内臓脂肪の増加などメタボリックシンドロームのリスクが上昇するという仮説のもとに予備実験を行ったが、予想に反してそれらに有意差は認められなかった。これは、摂取する餌の量が等しいためと考えられた。しかし、下顎頭の大きさに有意な差が生じた。そこで、本年度はそれらの原因を探求すべく、追加実験を行った。 当初において本年度は、OVXをした加齢モデルを使用して、正常食と粉食、正常な咀嚼と咀嚼不全をそれぞれ生じさせた、①通常食、②通常食で咀嚼不全、③粉食、④粉食かつ咀嚼不全の4群を8週間飼育実験のみを実施する予定であった。これに加えて最終年度の実験として予定されていた、OVXをしない正常なラットを使用した同様の実験も、前倒しをして本年度に実施した。 これらによって、すべての飼育実験が終了したことから、今後はそれらのデータを精査して、下顎頭、下顎第一大臼歯の形態変化、内臓脂肪の変化を明らかにする準備が整った。 下顎頭の予備的な解析によると、粉食を食事することと、加齢が下顎頭の大きさを小さくすることが明らかになった。これらの成果は食事環境を整えることがQOLを維持するために重要な要因であることを示唆した。 これらについて、日本顎関節学会、日本歯科放射線学会、ヨーロッパおよびアジア顎顔面歯科放射線学会、への発表の準備を行った。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、飼育実験が終了し、すべてのデータの収集が完了していることから、それらのデータの詳細を解析する。とくに、経時的にマイクロCTで撮影したデータについてはそのデータ量が膨大で未解析であることから、解析専用の分析機器を購入し効率よく解析を進める。この経時的なデータの解析が終了することで、下顎頭の形態変化が早期に惹起されるのか、あるいは、びまん性に起こるのかが明らかにされることになる。予備実験で、比較的早期に形態の変形が惹起されることが示唆されていたが、これらの詳細が明らかになることが期待される。 もし、早期に変化が起きるのであれば、壮年期から食事環境を整えることがQOLを維持するために重要であることを示唆するデータとなる。 今後は日本顎関節学会、日本歯科放射線学会、ヨーロッパ顎顔面歯科放射線学会ECDMFR2016およびアジア顎顔面歯科放射線学会The11th ACOMFRでこれらの成果を報告し、最終的に論文発表をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算の執行において、価格の微細な変動等により、1万円以下の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
日本顎関節学会、日本歯科放射線学会、ヨーロッパ顎顔面歯科放射線学会ECDMFR2016およびアジア顎顔面歯科放射線学会The11th ACOMFRでこれらの成果を報告し、最終的に論文発表を行う予定であるが、これらの学会発表の旅費および参加費等に使用する計画である。
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