研究課題/領域番号 |
26463175
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
谷口 奈央 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (60372885)
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研究分担者 |
廣藤 卓雄 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (10189897)
中野 善夫 日本大学, 歯学部, 准教授 (80253459)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 喫煙 / ストレス / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
喫煙の健康影響について、最近では身体的健康だけでなく、精神的健康についても言及されるようになった。本研究では、福岡歯科大学口腔歯学部6年生を対象に自己記入式調査用紙を用いた調査を実施し、喫煙が生活習慣と精神的健康に与える影響を調べた。 福岡歯科大学・福岡医療短期大学倫理委員会の承認を得て行った (第249号)。調査対象者51名のうち、結果の集計および分析について本人より同意を得た50名を分析対象とした。調査にはアンケート (喫煙状況、生活習慣、ストレス・疲労)、ニコチン依存症スクリーニングテスト、POMS短縮版 (気分・感情を評価) を利用した。 喫煙実態は、喫煙17名 (34%)、過去喫煙1名 (2%)、ためし喫煙4名 (8%)、喫煙未経験28名 (56%) だった。喫煙群 (喫煙 + 過去喫煙) は非喫煙群 (ためし喫煙 + 喫煙未経験) に比べて年齢が有意に高く、留年生や浪人生の喫煙が多いと考えられた。喫煙群は生活習慣において好ましくない傾向があり、食習慣に関する3項目で非喫煙群との間に統計学的有意差を認めた。また、喫煙群は非喫煙群に比べてストレスを強く感じるとの回答率が高く、2群間に有意差が認められた。POMS短縮版では、喫煙群は非喫煙群に比べて有意に「活気」が低く、「疲労」が高かった。さらに喫煙群におけるニコチン依存度と「疲労」得点は、有意差はないが正の相関を示した。 続いて安静時唾液を回収し、コルチゾール、分泌型免疫グロブリンA (S-IgA)、IL-1β、IL-6、TNF-αを定量し、喫煙群と非喫煙群を比較した。喫煙群は非喫煙群に比較してIL-1 βの値が有意に高かった。唾液中のIL-1 βは、疲労時のストレス負荷で有意に上昇することや歯周炎患者で高値を示すことが報告されている。本研究の結果から、喫煙と疲労・ストレスは密接に関係していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、自己記入式調査用紙を用いた喫煙と精神状態の関連性の評価、唾液中のストレスマーカー測定による喫煙とストレスの関連性の評価、配列解析を用いた喫煙が口腔内細菌叢に与える影響と口臭との関連性の評価、という流れで研究をすすめている。これまでに自己記入式調査用紙を用いた喫煙と精神状態の関連性の評価、唾液中のストレスマーカー測定による喫煙とストレスの関連性の評価まで終了し、成果を学会で発表している。現在これらの成果について論文を作成中であり、おおむね順調に研究がすすんでいる。
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今後の研究の推進方策 |
まず学生ボランティアから採取した唾液と舌苔の細菌叢解析を実施し、喫煙との関連性を調べる。続いて、口臭患者を対象とした口腔内細菌叢と喫煙状況が口臭に与える影響について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表の旅費を講座費から支払ったため、旅費で算定していた予算が残った。また細菌叢解析の被験者数が予定に比べて少なかったため、検査費用が予定よりも安価だった。口臭患者のサンプルは蓄積中であるが、まだ解析を実施していないので、解析用の費用が発生していない。
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次年度使用額の使用計画 |
学生ボランティアを用いた研究で、唾液中のストレスマーカーが喫煙によって影響を受けていることが示唆された。そのため、口臭患者を対象とした研究において、口腔内細菌叢の解析に加えて口臭患者についても唾液のストレスマーカーの測定を実施する。またこれから国際学術科学雑誌や国際学会での成果の発表が増え、また共同研究者との研究打合せも予定しているので、投稿料や旅費などが発生する。
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