研究課題/領域番号 |
26463175
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
谷口 奈央 福岡歯科大学, 歯学部, 准教授 (60372885)
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研究分担者 |
廣藤 卓雄 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (10189897)
中野 善夫 日本大学, 歯学部, 准教授 (80253459)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 喫煙 / 口臭 / 細菌叢 / ストレス / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
本研究では喫煙と口臭との関連を明らかにするために、喫煙の影響を、精神面、免疫機能、口腔細菌叢、の3方向からアプローチしてきた。疲労やストレスと免疫機能には密接な関係が推測され、それらは口腔機能の低下や細菌増殖を招き、口臭に影響すると考えられる。そこでまず、喫煙が精神的健康に与える影響について、歯学部6年生を対象に自己記入式調査用紙を用いた調査を実施した。その結果、喫煙者は非喫煙者に比べて「ストレスを感じる」との回答が多く、POMS短縮版では喫煙者は「活気」が低く「疲労」が高かった。さらに、喫煙者のニコチン依存度と「疲労」得点は、正の相関傾向を示した。 次に、被験者より安静時唾液を回収し、コルチゾール、分泌型免疫グロブリンA (S-IgA)、IL-1β、IL-6、TNF-αを定量し、喫煙者と非喫煙者で比較したところ、喫煙者は非喫煙者に比べてIL-1βの値が有意に高かった。唾液中のIL-1βは、疲労時のストレス負荷で上昇することが報告されている。またS-IgAおよびTNF-αは喫煙指数 (ブリンクマン指数) と正の相関を示し、それぞれ「疲労」得点と正の相関、「活気」得点と負の相関を示した。これらのことから、喫煙とストレスや疲労、免疫機能との関わりが示唆された。 口臭は主に舌苔に棲息する細菌によるアミノ酸代謝過程で発生し、舌苔はタバコの煙に直接曝露されるため、喫煙により舌苔細菌叢が受ける影響も口臭に関係すると推測される。そこで喫煙が舌苔細菌叢に与える影響を調べるために、被験者より舌苔を回収し、高速シーケンス法を用いて配列解析を行った。その結果、喫煙者において、Dialister属、Atopobium属等の割合が有意に高く、Haemophilus属、Gemella属、Peptostreptococcus属等の割合が有意に低く、喫煙者と非喫煙者で舌苔細菌叢が異なることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
喫煙とストレスや疲労に関する調査のまとめを口腔衛生学会雑誌にて発表した (口腔衛生会誌 2015;65(5):422-425)。また、唾液のストレス関連バイオマーカーと喫煙との関係については、日本歯科保存学会や歯科基礎医学会で成果を発表し、現在Tobacco Induced Diseasesに投稿中である。喫煙と舌苔細菌叢の関係については、まず健康な被験者を対象として、喫煙者と非喫煙者の舌苔細菌叢の配列解析をおこない、比較結果を細菌学会や口臭学会で成果を発表した。現在、論文作成にむけて解析を重ねている。口臭患者の舌苔サンプルは蓄積中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在投稿中の論文の受理と、健康な被験者を対象とした喫煙と舌苔細菌叢の関係についての解析をまとめるとともに、口臭患者の舌苔細菌叢と喫煙の関係を調べる。口臭患者のうち、成人で耳鼻咽喉科疾患および代謝疾患のない者を選び出し、喫煙者、過去喫煙者、非喫煙者に分け、唾液と舌苔の細菌叢を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
健常な被験者の舌苔細菌叢解析では、被験者数が計画時の予定よりも少なかったため、高速シーケンス解析が予定より安価となった。また、口臭患者の唾液・舌苔細菌叢解析について、十分なサンプル数を得るのに予定より時間がかかっており、まだ細菌叢解析を実施していないため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
口臭患者のサンプルが解析に十分な数となった時点で、細菌叢解析に進む。
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