研究課題/領域番号 |
26463175
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
谷口 奈央 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 准教授 (60372885)
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研究分担者 |
廣藤 卓雄 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (10189897)
中野 善夫 日本大学, 歯学部, 教授 (80253459)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 喫煙 / 細菌叢 / 16S rRNA / ブリンクマン指数 |
研究実績の概要 |
喫煙は、タバコのタールの臭いの他に、喫煙によって引き起こされる唾液分泌減少、舌苔付着促進、歯周疾患などにより、口臭に関係すると考えられる。口臭は主に舌苔に棲息する細菌によるアミノ酸代謝過程で発生し、舌苔はタバコの煙に直接曝露されるため、喫煙により舌苔細菌叢が受ける影響も口臭に関係すると推測される。本研究では、喫煙が唾液と舌苔の細菌叢に与える影響を、臨床的に健康な口腔環境を持つ若者を対象として調べた。 福岡歯科大学口腔歯学部6年生50名 (喫煙者18名、非喫煙者32名) を対象と唾液と舌苔を採取した。サンプルより抽出した細菌DNAから16S rRNA遺伝子をPCRによって増幅し、高速シーケンス解析法によってそれぞれ約3.0億塩基の配列を得た。OTU解析後、口腔内細菌16S rRNA塩基配列データベースを用いて相同性検索を行った。また喫煙と細菌の量的関係を評価するために、ブリンクマン指数との相関分析を行った。 菌叢の多様性解析では、喫煙群と非喫煙群の間に有意な違いはみられなかった。属レベルで比較解析を行ったところ、喫煙群はDialister属、Atopobium属等の割合が有意に高く、Haemophilus属、Gemella属、Peptostreptococcus属などの割合が有意に低かった。Dialister属とPeptostreptococcus属は歯周病との関連が示唆され、Atopobium属は口臭患者の唾液に高い割合で存在することが報告されている。ブリンクマン指数との相関分析では、Selenomonas属、Bifidobacterium属が正の相関を示した。Selenomonas属は、歯周炎など病的状態で多く分離されるグラム陰性運動性桿菌である。Bifidobacterium属は、糖を分解して乳酸や酢酸を産生するグラム陽性偏性嫌気性桿菌で、タバコの主流煙は酸性であることから、酸性環境下に強い菌の増加がみられた可能性がある。 喫煙は唾液と舌苔の細菌叢に影響を与えていた。喫煙者では口腔内の病的状態と関係する細菌が高い割合でみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに研究成果を日本細菌学会、日本口臭学会、日本口腔衛生学会で発表したが、最終目標である国際雑誌への論文掲載までまだ至っていない。現在論文を執筆中であり、追加解析の必要性もあることから研究期間を一年延長して取り組んでいるところである。
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今後の研究の推進方策 |
健常者における喫煙者と非喫煙者の口腔細菌叢の比較において、喫煙は唾液と舌苔の細菌叢に影響を与えており、喫煙者では口腔内の病的状態と関係する細菌が高い割合でみられた。今後研究成果をまとめるにあたり、喫煙による舌苔細菌叢の変化の口臭への関連性について口臭測定値と比較して明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行がやや遅れているため、研究期間を一年間延長した。
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次年度使用額の使用計画 |
喫煙者と非喫煙者の口腔細菌叢の比較に加えて、口臭検査値への影響を調べる。また、これまでの研究成果及びこれからの研究成果を学会発表および論文にて発表する。これらの目的のために研究費を使用する。
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