研究課題/領域番号 |
26463180
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
若杉 葉子 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (20516281)
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研究分担者 |
山本 敏之 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経内科, 医長 (20602246)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 摂食嚥下障害 / パーキンソン病 / 嚥下造影検査 / 誤嚥 |
研究実績の概要 |
今年度の目的:パーキンソン病では早期より口腔から咽頭への食物の送り込みが障害される。口腔期障害は嚥下運動の連続性や咽頭期にも影響すると推察されるが、十分に評価されていない。われわれはパーキンソン病患者の口腔期障害が嚥下機能や全身状態に与える影響を検討したので報告する。 対象:日常的に食事を摂取しているパーキンソン病患者110例(男性59例、女性51例、平均年齢69±9歳、罹病期間10年)を対象とした。すべての対象から検査同意を得て嚥下造影検査(Videofluorography、以下VF)を行った。なお、パーキンソン病患者はL-dopa服用後、3時間以内に、on状態で検査を行った。VFでは座位側面から対象を透視し、バリウム含有液体10mlの嚥下を30フレーム/秒で録画した。VFの動画から液体の口腔移送時間(Oral Transit Time、以下OTT)を測定した。健常対照17例(男性13例、女性4例、平均年齢60±11歳)のOTTの平均値+2SD 1.8秒をカットオフ値とし、パーキンソン病患者を1.8秒未満78例と1.8秒以上32例の2群にわけた。2群の嚥下機能、全身状態を比較した。 結果:OTTが長い群は、早期咽頭流入、口腔残留、咽頭残留、誤嚥の頻度が有意に多かった。また、体重、BMI、年齢においても有意差を認め、OTTが長い群で有意に体重やBMIは低く、年齢が高かった。 考察:口腔から咽頭への送り込みに時間を要するパーキンソン病患者は、誤嚥のリスクが高いことが示唆された。舌運動の障害のために液体のコントロールが不良で、嚥下反射への連続した運動が障害された結果と考えられた。また、臨床的にも栄養障害のリスクがあることが示唆された。パーキンソン病患者の口腔期の障害はL-dopa治療で改善することがあるため、OTTの計測により嚥下障害の治療が可能な患者をスクリーニングできる可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標であったパーキンソン病患者における口腔期障害が嚥下機能や全身状態に及ぼす影響は検討できた。
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今後の研究の推進方策 |
現在論文の執筆中である。また、平行してパーキンソン病とレビー小体型認知症における口腔期障害の及ぼす影響の違いを検討する。液体嚥下時に限らず、咀嚼物の検討も行う予定である。さらに、多系統萎縮症や進行性核上性麻痺でも検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに使用できているが、謝金の部分で第三者に依頼する予定だった部分を自分で行ってしまったため、使用金額の減少が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は対象疾患もパーキンソン病だけでなく、レビー正体型認知症や多系統萎縮症の患者も対象となり、検討項目も液体の嚥下時だけでなく咀嚼物嚥下時と増えるため、第三者に依頼し、謝金としての支払いも生じる予定である。
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