研究課題/領域番号 |
26463181
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
黒瀬 雅之 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40397162)
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研究分担者 |
田代 晃正 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, その他部局等, 助教 (60598118)
伊藤 加代子 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (80401735)
山村 健介 新潟大学, 医歯学系, 教授 (90272822)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 乾燥症 / ドライアイ / ドライマウス / TRPM8 / 炎症 |
研究実績の概要 |
三叉神経領域での乾燥症は、近年1つの症候群として捉えられ注目されている。これは、同一神経支配を受けるだけでなく、分泌腺からの分泌機序が類似しているからである。研究代表者は、分泌腺からの“基礎分泌”に着目し、痛みを伴わず基礎分泌を支配する系を活性化させる手法の確立を目的に、そのターゲットとして、水分の蒸発に伴う温度変化に応答することで 分泌を促すCold Cellを同定し、この系の不全、すなわち脱感作が起因となり乾燥症を誘発することを示唆してきた。脱感作は、濃い濃度のMenthol投与により誘発されるが、興味深いことに乾燥症モデル動物において、非摘出群では脱感作を起こさない低い濃度のMentholの投与により脱感作が誘発された。このことは、乾燥症患者への反復的なMentholが含有された点眼・保湿剤の投与が、基礎分泌系に影響を及ぼし結果として“悪循環”を引き起こすことを示唆している。この一連の脱感作現象を解除する手法の確立を目的に、その引き起こすメカニズムを解明するため「何に対して」「何が」「どのように」を知ることを本研究計画の柱とし、一連の研究計画を立案している。 研究計画の初年度に該当する本年度には、”分泌腺摘出モデルを用いたMenthol脱感作モデルの検証と確立”として、主として分泌腺摘出1週群、乾燥症初期、炎症の観点から見ると急性期におけるCold Cellの応答記録を行うことことした。その中で、データの蓄積に努め、十分なサンプル数を確保することができ、予備実験の段階で推測されてきた涙腺摘出群におけるTRPM8作動薬であるMentholに対する応答の有意な感作という結果を得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画で必要となる機器や物品の多くは、当該研究費採択前の若手研究 (B) 採択時の経費を用いた研究遂行時より継続的に使用が可能であった。よって、新規に何らかの備品が必要であることが少なく、実験の着手が容易であった。さらに、予備実験の際に得られたデータの傾向とほぼ同一の結果が本年度中に得られたことにより、研究計画策定時に立案した実施計画通りに進めることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
概ね、初年度は研究計画に従って遂行することができたので、申請時の計画通りに次年度も行うが、その中で、本年度後半にその効果を確かめ、興味深い結果を導き出したTRPM8とは異なるチャネルであるTRPV1にも着目したい。研究代表者は、以前の研究において、非摘出群の動物で①TRPM8の作動薬が研究対象であるCold Cellの活動性を増強されることと、②TRPV1の作動薬がCold Cellの活動性を著しく抑制することを報告しており、Channelを介するCold Cellに及ぼす効果は、正反対であった。本研究の結果から、実験的に作製された乾燥症は、神経細胞に対してNGFなどの栄養因子の誘発を促すことが示唆されることから、正反対の効果を誘発したTRPV1作動薬に対しても同様の影響をもたらすのか?を検討したい。この研究を追加することで、脱感作現象を引き起こすメカニズムを解明のための「何が」「どのように」のさらなる検討に繋がることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の初年度である本年度では、現在までの達成度の項目で記載したように、非常に順調に研究計画が達成されている。支出の中で多く見積もりを計算していたのは、実験動物と関連する薬剤に対してであった。しかし、研究計画立案時に予定されていた実験予定数よりも少ない頭数で十分な結果が得られたため、物品費が予定よりも少なくなり、予定額との差額が出た。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には、本年度に明らかとしたTRPM8作動薬に加え、TRPV1作動薬を用いた実験計画を企画している。実験動物としては、概ね50匹前後を用いることを企画しているが、予備実験で得られた結果と類似した結果が得られるのかは不透明である。そこで、本年度に生じた余剰分を用いて、十分な頭数を用いて迅速に結果が得られるように対処したい。また、効果が得られた場合には、その効果がTRPチャネルを介した反応か否かを検討するために、それぞれの拮抗薬の投与を検討している。チャネルの拮抗薬の購入には費用がかかり、また本研究計画にあるようなin vivoでの実験系では、その使用量も多くなる。そこで、本年度に生じた余剰分を用いることとする。
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