本年度に行った内容について:当院味覚外来を受診された味覚障害を有する患者のうち、自発性異常味覚を訴える患者のみを対象としてピックアップしたところ、10名に満たない患者数であったが、そのうち同意が得られた6名を対象に、患者データ収集を行い、前年度までに収集した患者データに追加した。 結果および考察:唾液中のマグネシウムは苦い味を励起させることが報告されており、その実際について検証するべく、データ収集を行った。前年度までには、健常者データ19名と患者データ9名とで比較して、唾液中のマグネシウムの値について検討したところ、値が突出して高い者が認められたものの、有意差は得られなかった。しかし患者群では高い傾向にあり、データを追加していくことで、差は明らかになろうと予測していた。このたび6名分のデータを追加したところ、やはり患者群が有意に高い結果が認められたことは、研究開始時に予想していた結果と一致し、有意義なものであった。しかしながら、予想に反して、血中のマグネシウムの値には有意差が認められなかった。したがって、ヒト体内におけるマグネシウムの同行は不明な点が多いが、今後は、唾液中のマグネシウムが高くなる理由を考えていく必要がある。他に有意差が認められた項目として、①唾液分泌量(患者群が有意に少ない)、②服用薬剤(患者群が有意に多い)、③アレルギー疾患の有無(患者群が有意に多い)、④口腔カンジダ症(患者群が有意に多い)、⑤逆流性食道炎(患者群が有意に多い)、⑥自記式の調査票GHQ30による精神神経症状のスコア(患者群が有意に多い)の6項目が認められた。これらの関連について検討すべく、さらに客観的データを加えて、今後も検討していく予定である。
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