研究課題/領域番号 |
26463194
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
飯沼 利光 日本大学, 歯学部, 講師 (10246902)
|
研究分担者 |
小宮山 一雄 日本大学, 歯学部, 教授 (00120452)
佐藤 仁 日本大学, 歯学部, 助教 (70360170)
祇園白 信仁 日本大学, 歯学部, 教授 (90153262)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 超高齢者 / 肺炎罹患 / 就寝時義歯装着 / 口腔衛生習慣 |
研究実績の概要 |
お口の健康が超高齢者の健康状態に及ぼす影響を検討する目的で,自立して生活する85歳以上の超高齢者524名を対象に,初期調査から3年経過後の口腔の健康状態と肺炎罹患に関する疫学調査を行った.その結果,3年間の追跡期間中48名が肺炎に罹患した. さらに,肺炎罹患の有無と種々の測定項目との関連性を分析したところ,嚥下障害の有無,就寝時における義歯装着,日常生活動作(ADL)の低下,認知機能障害の有無,BMIによる低体重(18.5%未満),疾患では呼吸器疾患と脳卒中の既往に有意な関連性が認められた.血液検査結果からは,肺炎罹患者には栄養状態の指標であるアルブミンの低下,炎症の程度を示すCRP値およびインターロイキン-6値の有意な上昇が認められた.. さらに,肺炎罹患との有意な関連性が認められた項目の中で,唯一の行動要因である「就寝時における義歯装着」の有無と肺炎罹患者数との関係を検討した結果,就寝時義歯非装着者に比べ装着者の肺炎罹患患者数は3年間の観察期間中,時間の経過に伴い有意に増加した.さらに、就寝時義歯非装着者に比べ義歯装着者の肺炎罹患リスクは約2.3倍と高かった.これは,嚥下障害,認知症や脳卒中さらに呼吸器疾患罹患など,これまで肺炎罹患リスクの重要なファクターとして考えられてきた疾病と同等の値であった.また,就寝時義歯装着者の口腔内の特徴として,非装着者に比べ舌や義歯へのプラーク付着,歯肉の炎症,カンジダ菌による感染が多く認められた. これらのことから,自立した生活を送っている比較的元気な超高齢者であっても,就寝時の義歯装着は細菌感染や炎症の誘発などにより口腔環境に悪影響を及ぼすだけでなく,肺炎罹患のリスクを高めることが明らかとなり,日常生活での口腔衛生習慣の改善が肺炎予防に重要であることが明らかとなった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、調査対象者が85歳以上と超高齢者を対象にしているにもかかわらず、542名と大規模な疫学調査を行い、超高齢者の口腔機能と身体機能の関連性を明らかとする事を目的とし、横断でのコホートの確立を行っている。さらに初期調査を終了した被験者への3年後追跡調査を行ったが、70%以上と非常に高い再調査率を得る事が出来ている。また、現在6年経過時の追跡調査を行っており、縦断的な疫学研究としても非常に大きな規模での検討を行っている。今回この縦断的データを分析した結果から、超高齢期における最大の死亡要因である肺炎と、就寝時での義歯装着という、口腔との関連性を明らかとし、緒高齢期における口腔衛生の重要性に関するエビデンスを提供できたことの意義は非常に大きいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、6年後の追跡調査を無事完了させ、口腔状態あるいは口腔機能の変化が超高齢者の生命予後や、健康状態の維持にいかなる影響を及ぼすかについて、多角的な検討を行いたい。 また、超高齢期においては疾病と同様に大きな問題となっている虚弱について、口腔との関連性について検討したい。具体的には、口腔機能と栄養摂取との関連性の分析を行い、摂取不足な栄養素やそれに関わる口腔因子について調査し、超高齢期での虚弱の予防に関与して行きたい。これにより筋肉量低下を未然に防ぐことができれば、転倒リスクを低下させることができ、寝たきりt峰の予防につながるものと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
超高齢者から採取した唾液を、生化学的に分析を行うが、その薬剤キットはアメリカより輸入にて購入する。しかも長期保存が不可能であるため、データサンプリングと分析のタイミングを見計らっての購入予定であった。しかし今回、諸般の事情により輸入に時間を要し、3月中での購入ができなかった。そのため、4月購入となり予算の執行が年度をまたぎ次年度使用することとなってしまった。
|
次年度使用額の使用計画 |
4月上旬での購入予定であり、当初の計画通りに4月から分析を行う。次年度にも同様薬剤を購入の予定であるが、今回のことを踏まえ、1か月ほど早めに購入を予定している。
|