研究課題
加齢に伴う免疫力の低下は口内炎や歯周病等といった口腔疾患の発症や重症化のリスクを上げるにとどまらず,高齢者の死因の上位にある誤嚥性肺炎の発症を招くなど,全身に悪影響を与えることが報告されている。口腔は,免疫グロブリンや抗菌物質等が存在する免疫器官であるが,加齢とともに口腔粘膜障害や唾液分泌量低下が生じることによって,口腔免疫能の低下がみられる。わが国では,古くから発酵の技術を上手に利用して,多くの発酵食品を食生活に取り入れてきている。発酵技術により,食材の栄養価を高め,消化吸収を促進する働きがあり,腸内細菌のバランス調整をすることが分かっている。本研究では高齢社会における口腔・全身の健康の保持増進と感染予防に味噌や納豆を代表とする発酵食品が関与するかを免疫応答効果(特に,抗菌ペプチド)に着目して検討を行うことを目的としている。初年度は,発酵食品である納豆が抗菌性ペプチドの発現に与える効果について検討した。BALb/c生後6-8week(♀)マウスにPBSで懸濁した市販納豆を1週間経口摂取させ,摂取期間終了後,マウスの唾液,血液,顎下腺,歯肉,小腸を採取した。唾液中の分泌型IgA抗体価,Cathelicidin関連抗菌性ペプチド(CRAMP)の発現,血漿中CRAMP蛋白の発現を解析した。結果,実験期間中,マウスの体重に有意な変化はみられなかった。CRAMPは,小腸,歯肉で対照群(PBSのみ投与)に比較し有意に発現頻度が高かったが,顎下腺において発現は確認されたが対照群に比して有意差はみられなかった。血漿中CRAMP蛋白の発現は有意に上昇していた。以上から,生後6-8week(♀)マウスにおける納豆の摂取は腸内免疫応答を亢進させるだけでなく口腔内でも効果を示すことが確認された。平成27年度は,加齢促進マウス,老齢マウスでの免疫応答効果について検討を加えていく予定である。
3: やや遅れている
当初の予定では,初年度にBALb/c生後6-8week(♀)マウス,加齢促進マウスにおける発酵食品の免疫応答の確認を行う予定であった。しかし,加齢促進マウスにおいては,マウスの入手の手続きの遅延,自身の時間不足により今年度の解析には至らなかった。
初年度に実施したBALb/c生後6-8week(♀)マウスにおけるマクロファージおよびNK細胞についての解析を継続して行う。加齢促進マウス,老齢マウスにおける発酵食品の影響について,BALb/c生後6-8week(♀)マウスで行ったと同様の解析を行い,免疫機構についての評価を実施する。
初年度計画の加齢促進マウスによる発酵食品摂取後の免疫機構評価の実験が本年度未実施となったため,残額が生じた。
次年度に加齢促進マウスによる発酵食品摂取後の炎症性サイトカイン,抗菌ペプチドの遺伝子発現,タンパク質レベルの発現について解析を行うため,ELISAキット,酵素標識抗体,蛍光標識抗体,その他,一般試薬,シャーレ,遠心チューブ一式に使用する予定である。
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日大口腔科学
巻: 40 ページ: 5-9
日本総合口腔医療学会雑誌
巻: 1 ページ: 24-35
日本歯科人間ドック学会誌
巻: 9 ページ: 45-49
巻: 9 ページ: 36-44