研究課題/領域番号 |
26463195
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
田口 千恵子 日本大学, 松戸歯学部, 助手(専任扱) (80434091)
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研究分担者 |
小林 良喜 日本大学, 松戸歯学部, 助手(専任扱) (10609085)
有川 量崇 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (50318325)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 発酵食品 / 老齢マウス / 免疫応答 / 腸内細菌 / 短鎖脂肪酸 |
研究実績の概要 |
本研究では発酵食品が口腔・全身免疫機構へ及ぼす影響や効果について評価することを目的として研究を遂行している。初年度、若年(生後6-8week)マウスにおける納豆の摂取は、小腸、歯肉でcathelicidin関連抗菌性ペプチドを有意に発現しており、腸内免疫応答を亢進させるだけでなく口腔内でも効果を示すことを確認した。今年度は、発酵食品摂取により腸内、口腔内で生じた免疫応答の亢進に関するメカニズムの解明のために、腸管における免疫応答の要因としての腸内細菌の関与について検討した。若齢(7週齢)および老齢(12か月齢)のBALb/c雌マウスに納豆(菌)粉末を自由摂取させた後、糞便を採取し、糞便中の腸内細菌叢を16SrDNA部分塩基配列のT-RFLP解析で行い、糞便中の有機酸を高速液体クロマトグラフィーによって測定した。結果、腸内細菌叢は、若齢マウスに比較し老齢マウスにおいてLactobacillales目の減少、Clostridium subcluster XIVaの増加がみられた。また、納豆摂取の老齢マウスは対照に比較し、Lactobacillale目、Clostridium subcluster XIVaの増加が認められた。糞便中の有機酸は、若齢、老齢マウス共に酢酸が高く、プロピオン酸、酪酸がみられた。Lactobacillalesは、生体で有益な細菌であり、老齢マウスの腸内細菌叢の改善を示すものであると考えられた。Clostridium subcluster XIVaにより産生される酪酸が制御性T細胞(Treg)の誘導に関与し、腸管の免疫恒常性維持に寄与していることが報告されている。これらの結果から納豆摂取による腸内免疫応答の亢進に関し、Clostridium subcluster XIVaの増加とそれに伴い産生される酪酸による腸管での免疫修飾作用の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度からBALb/c雌マウスを飼育予定であったが、飼育開始時期が遅延したため、今年度予定していた老齢マウスにおける免疫機構の測定であったサイトカイン、抗菌ペプチドの発現状況、免疫組織学的検索については、実施に至っていない。現在の状況としては、初年度に若齢マウスにおいては、納豆の摂取は、小腸、歯肉でcathelicidin関連抗菌性ペプチドを有意に発現していることを確認している。今年度、老齢マウスにおける発酵食品摂取の効果として、腸管での腸内細菌と免疫機構について検討し、短鎖脂肪酸の産生、腸内細菌叢の改善を認めることまでは進んでいる。次年度、早々には、今年度、計画の老齢マウスにおける免疫機構に着手できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26 年度から飼育しているマウスに対し、唾液、血液を採取し、安楽死後、唾液腺、歯肉粘膜、気管支、鼻粘膜、リンパ節、腸管、脾臓、生殖器を摘出する。① 唾液、血液の全IgA、IgG 抗体価をELISA 法にて解析する。② 頬粘膜、歯肉粘膜、気管支、鼻粘膜、リンパ節、腸管、脾臓、生殖器より単核細胞を単離し、T 細胞、B 細胞、樹状細胞、マクロファージおよびNK 細胞について、フローサイトメトリーにて解析を行う。③ 各組織からRNA を抽出し、炎症性サイトカイン(IL-1,IL-6,IL-8,IL-12,TNF-α)、抗菌ペプチド(Cathelicidin,Defensin,ヒスタチン)の遺伝子発現をPCR 法、タンパク質レベルの発現をウエスタンブロッド法にて解析する。これらの結果をまとめ、研究目的である老齢マウスにおける発酵食品の摂取が口腔・全身免疫機構へ及ぼす影響や効果について評価する。
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