日本人の伝統的な食文化が世界でも注目を集めている。わが国の伝統的な食文化として発酵食品が挙げられている。本研究では発酵食品が口腔・全身免疫機構へ及ぼす影響や効果について評価することを目的として研究を遂行してきた。 これまで、若年マウスにおける納豆の摂取は、小腸、歯肉でcathelicidin関連抗菌性ペプチドを有意に発現しており、腸内免疫応答の亢進のみならず口腔内でも効果を示すことを確認した。また、納豆摂取により腸内、口腔内で生じた免疫応答の亢進に関するメカニズムの解明のために、腸内細菌の関与について検討し、腸内免疫応答の亢進に関し、Clostridium subcluster XIVaの増加とそれに伴い産生される酪酸による腸管での免疫修飾作用の可能性を示した。 今年度は、老齢マウスにおける市販納豆の摂取が宿主防御機構である抗菌ペプチドの誘導を行うかについて検討した。72週齢のBALB/c雌マウスに、PBSで懸濁した市販の納豆を7日間経口投与した。投与期間終了1日後に、舌、歯肉、唾液腺(顎下腺、舌下腺)、小腸を採取した。各サンプルからtotal RNAを精製してcDNAを合成し、カテリシジン関連抗菌性ペプチド(CRAMP)の発現をリアルタイムPCRにより解析した。結果、市販納豆摂取により、CRAMPの発現が舌、顎下腺、舌下腺で検出された。しかし、顎下腺、舌下腺においては対照群に比較し有意な差は認められなかった。また、老齢マウスにおいて、歯肉、小腸での誘導は認められず、若齢マウスにおける誘導とは異なる結果であった。 今年度の結果から、市販発酵食品の摂取により老齢マウスにおいても口腔組織(舌)において抗菌ペプチドの誘導が認められた。しかし、若齢マウスにみられた小腸、歯肉での誘導は確認されず、加齢による免疫機構の影響であることが考えられた。
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