研究課題
本研究は骨組織を中心とした多臓器間ネットワークによる血糖値調節機構にどのようにスフィンゴミエリン合成酵素(SMS)が関与しているかを明らかにし、スフィンゴミエリンをターゲットにした糖尿病患者の歯周病治療応用へと展開するための研究基盤を確立することが目的である。計画している具体的な研究項目は、1、SMSによる血糖値調節メカニズムの解明、2、骨組織を介した糖脂質代謝とSMSとの関連、3、SMSによる酸化ストレス調節と骨代謝の関係、4、SMSノックアウトマウスへのスフィンゴミエリン投与による血糖値の改善、の4つである。平成27年度は特に骨組織でのSMSの働きについて、注目し実験を行った。平成26年度までの予備実験でSMSノックアウトマウスにおいて、骨の変化を確認しているので、平成27年度はin vitroの実験を行った。実験方法として骨芽細胞からSMSをノックダウンし骨芽細胞分化に影響を及ぼすかを検討した。SMS2をノックダウンした細胞ではコントロールと比べて、骨芽細胞分化や石灰化が抑制されていた。さらに、骨芽細胞を介した破骨細胞分化も抑制していた。これらの結果から、SMS2は骨芽細胞の分化に関与し、RANKLの発現を制御することで、破骨細胞分化を調節している可能性が示唆された。さらに今後、SMSが骨芽細胞分化を調節することで、骨芽細胞が発現するオステオカルシンによる血糖値調節機構に及ぼす影響を明らかにすることができ、糖尿病患者の歯周病治療応用へと展開するための研究基盤となる可能性も示唆された。
3: やや遅れている
実験計画ではスフィンゴミエリン合成酵素(SMS)をノックアウトしたマウスを用いて、実験を行う予定であったが、必要数のマウスが得られなかったため、すべての実験ができなかった。
今後はSMS骨芽細胞特異的KOマウスから骨芽細胞を単離し、骨芽細胞の分化に及ぼす影響を確認する。また、SMSが欠損した骨芽細胞を用いて、糖代謝に及ぼす因子の発現や影響について、解析を行う。
少額のため、次年度に使用することにした。
試薬を購入した際に付け足す。
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Archives of Oral Biology
巻: 60 ページ: 1319-26
10.1016/j.archoralbio.2015.06.001.