研究課題/領域番号 |
26463211
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
清水 裕子 香川大学, 医学部, 教授 (10360314)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 蒸気布 / 清拭 / 脳波 / 温度 / 湿度 / 角質水分量 / SD法 / カイロ型 |
研究実績の概要 |
平成28年度は研究期間3年目に入り、蒸気布の臨床応用に関する検討を行った。 第1に、「入院中の終末期患者における蒸気布罨法の効果」を検討した。4名のがん治療中の患者に蒸気布を実施した結果、この罨法を受けた患者はいずれも身体苦痛が緩和,解放されたとの苦痛緩和発言があった。その言説は、喜びや共感を伴い、実施しない場合の患者には想定できなかった生き生きとした様相を表した。このことから、蒸気布罨法はがん終末期患者にリラクゼーション効果をもたらし苦痛緩和ができることがわかった。 第2に、蒸気布の汎用化を促進するために新規素材の開発を検討した。地元企業にサンプルを依頼し試作品を作成した。試作にあたり、不織布包布式カイロ型清拭具の熱源37.5gと45.0gについてSD法の比較を行い、37.5gの優越性を確認した。この37.5gの試作品とタオル蒸気布とのSD法の比較を行い、概ね類似効果が確認できた。この時点で、試作品の開発3者(カイロ、不織布包布式考案、原理提案大学)で合同特許出願を行った。同時に汎用化のために四国オープンイノベーションin松山に開発品を紹介し、一方開発3社で汎用化ミーティングを行った。 第3にタオル素材について撥水性の高い今治タオルとループ織タオルおよび蒸気布の清拭後の角質水分量、皮膚面温度湿度測定を行い、試作品は中間に位置する効能を有していることが分かった。この時点で先の特許の国内優越性を調査した結果、類似する競合品はないことが分かった。 そこで、蒸気布の汎用清拭具開発の信頼性を高めるため、試作品の把持側面の紙質の改善を行い、把持側面の熱を減じさせ、改良品としての信頼性を確保する必要がある。そのため改良品と蒸気布および今治タオルの脳波、SD法、温度、湿度を再度測定し、蒸気布の臨床的妥当性を高める必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、先行した挑戦的萌芽で蒸気布の独自性を検討し特許出願を行った。この原理を応用して汎用品の開発を行い、その原理について他の研究者と合同特許出願を行った。また、その国内優越性も確保した。さらに開発した汎用品の信頼性、妥当性を高めるための測定を計画している。 以上のことから、本研究は、開発原理の臨床的妥当性を高める研究であったが、研究過程で得られた成果が新素材の開発をもたらしうるものとなったことから、計画以上の進展と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最も困難の点は、医学部倫理委員会の問題である。直接測定の場合、病院臨床とはことなるものの病院臨床と同様の倫理基準や倫理手続きのため、本調査の臨床的妥当性の検討はは大きく後退した。残された4年目には、何としても脳波測定を行う必要があり、申請を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
開発した試作品の作成において本研究の成果としては十分であるが、今後の汎用化を見越して、改良品の作成に取り組み、さらに計画以上の成果を出したいために時間を要した。また、その過程で倫理委員会の手続きが随時変更されたため、そのことに対応することが困難であったことが延長の理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年にあたり、試作改良品の作成費用、また成果発表のための学会発表、翻訳料、論文投稿料などである。
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