本研究は、看護師の腰痛予防の観点から、病院勤務看護師の作業姿勢の実態について、援助内容とともに明らかにし、腰部負担の少ない作業姿勢や援助方法を検討することを目的として行った。 平成27~28年度は、姿勢の実態を観察・計測するための機器の選定と方法の検討、および協力施設への依頼と調整を行った。平成29~30年度は、研究倫理審査を受審し、病院勤務看護師8名の協力を得て、日勤帯の3~4時間の業務内容と作業姿勢の実態調査を行った。研究者らによる30秒ごとの業務内容の記録とベッド高の測定、および、看護師の腰部に装着した計測機器による100msごとの腰部前傾角度の算出を行い、援助場面ごとの前傾角度の推移を確認した。援助中の腰部前傾角度については、20度ごとにその割合を求め、援助内容や実施時のベッド高とあわせて分析・検討した。臥床患者の全身清拭・陰部洗浄においては、ベッド高40~50㎝の7場面における60度以上の前傾の割合は32~50%であり、ベッド高60~70cmの8場面の12~25%と比較して高く、ベッド高が低いほど深い前傾姿勢をとる頻度が高い実態が明らかになった。また、全身清拭時にベッド高の調整を行ったのは3場面と少なかった。一方で、臥床患者のおむつ交換は3場面あり、ベッド高60cmで行われていたが、60度以上の前傾は0.5~1.1%と深い前傾姿勢は少なく、20~40度の前傾が24~45%で最も多かった。臥床患者であっても援助内容や所要時間等により、同じベッド高でも前傾角度の割合は異なっていた。今後、移乗や食事介助など、調査時に実施された他の援助場面の分析と、腰部負担に影響すると言われている前傾姿勢から上体を起こす動作の頻度等の詳細な分析を行い、腰部負担軽減策の検討を行う。
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