研究課題/領域番号 |
26463245
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
松本 智晴 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 准教授 (80540781)
|
研究分担者 |
宇都 由美子 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (50223582)
井上 奈々 大阪府立大学, 看護学研究科, 助教 (80611417)
吉田 拓真 鹿児島大学, 理工学域理学系, 助教 (80707141)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 臨地実習 / 電子カルテ / アクセスログ / 看護学生 |
研究実績の概要 |
本研究は、看護学生と看護師の電子カルテ閲覧パターンの差異を分析し、電子カルテからの効率的な情報収集技法について評価を行う。そして、看護師による効率的な情報収集技法のモデリングを行い、学習のための支援ツールを開発することを目的とする。 今年度は、患者の入院と手術に関連して看護学生と看護師の電子カルテ閲覧パターンを比較し、課題を明確にした。分析の対象は学生のアクセスログ3,425件、看護師のアクセスログ5,475件で、解析はDEMATEL法を用いた。電子カルテの画面遷移は、看護学生はバイタルサイン等の一般状態の把握から行っているのに対し、看護師は多職種の情報から患者の最新状態の把握を行っており、チーム医療に対する認識の差異が影響していると考えられた。また、看護学生は1人の患者で閲覧終了からカルテ起動を繰り返しており、目的を明確にした情報収集の難しさが伺えた。背景として、電子カルテは1つの画面に多職種の多種多様な情報が掲載されることにあることが考えられる。本研究は、患者の入院に焦点をあてた分析の結果と同様の結果が得られたが、因果ダイアグラムでは、学生が手術に関連して閲覧した「経過表」が突出しており、これは看護師にはない傾向であった。看護師はアセスメントを繰り返しながら情報収集を行っており、情報収集の目的に沿って情報から情報へと繋がっていく一定のパターンが生み出される。そこに学生と看護師の差異が生まれると考えられ、看護基礎教育における課題であることがわかった。これらの結果を踏まえて、看護師の効率的な情報収集技法のモデリングと支援ツールの検討、開発に取り組んでいる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、これまでの看護学生と看護師のアクセスログの分析結果を検討し、電子カルテからの情報収集における学生の課題を明確にした。看護師は電子カルテ閲覧の際、多職種の情報からアセスメントを繰り返しながら患者の状態を捉えていく。一方、学生は看護過程のための情報収集を行うため、看護師が情報に変換して捉えるものをデータとして収集し、後から情報に変換するという思考のプロセスが電子カルテ閲覧に影響することがわかった。したがって、学生は電子カルテを閲覧している際に情報と情報を関連付けられないこと、チーム医療の実践のための情報活用が難しいことから、これらの学習を支援する必要がある。これまでの研究成果について研究協力者の看護師に確認してもらい、評価を得た。そして、看護師に協力を得ながら看護師の情報収集技法のモデリングについて検討、支援ツールの開発に取り組んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
学生にとって電子カルテは有用な教材である。学習効果の向上に寄与するための活用につなげるには、情報収集場面での思考パターンについての課題があることが明らかである。今年度は、先行研究の結果も踏まえてチーム医療を意識したアセスメントの思考につながるための支援ツールとして開発、評価を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、看護師の情報収集技法のモデリングと支援ツールの開発を行う予定であったが、前年度の基礎データの収集に遅れが生じたことにより開発が終了しなかった。次年度は、支援ツールの開発、評価を行うため、協力者への謝金や物品購入費にあてる予定である。
|