平成29年10月、看護学教育モデル・コア・カリキュラムに「主な和漢薬(漢方薬)の薬理作用、機序、副作用、適応を説明できる」という文言が収載されたが、これを薬理学の講義の中でのみ完結させてしまうのはもったいない。 平成27年度に「全国の4年制看護学部、看護学科をもつ大学における漢方教育の実態と漢方教育に対する意識調査」を行い、その結果について平成28年度に解析を行った。平成29年度は関係学会において発信を行い、そこでの質疑応答から得られるフィードバックと、教材を作成するための基礎となる学習を行った。 得られた新知見は、①東洋医学的に証を判断する四診は、看護のアセスメントと親和性が高く、フィジカルアセスメントとして取り入れることで理解がすすみやすいこと②漢方の未病を診る概念、心身一如、全人的医療という視点は、患者のみならず家族の背景や歴史、地域も含めて行われる「看護」に深くかかわるものであり、看護の質を高めることに繋がること③チーム医療が推進され多職種連携が進むなかで、在宅看護、老年看護、緩和ケア、災害医療の場面で漢方の果たす役割は大きく、看護のみならず多職種への教育が必要なこと④使命感、やりがいから働きすぎてしまう医療者の心身の未病にも漢方は活かされるであろうこと、である。 看護学教育モデル・コア・カリキュラムに沿って、またこれらの知見を活かして、平成30年度には動画も含むパワーポイント教材を作成し、近隣の漢方専門医および看護学科教員に供覧し意見をもらい改良を重ねた。漢方学的なフィジカルアセスメントの理解については、ジグソー法を応用したグループで行うカードゲームを考案した。 これからになるが大学のホームページ上等で無料公開し、全国の看護系大学、専門学校、あるいは卒後の生涯教育としても利用してもらえたらと考えており、紙媒体での執筆も検討している。
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