最終年度には、臨床の看護場面で、津軽地域の生活者である患者の訴える方言の意味を、看護者が理解できる助けとなることを目的とした看護教育教材を作成し、公表した。 研究期間3年のうち、1年目は、臨地実習を終了した看護学生と、看護基礎教育機関に所属する看護系教員を対象に、アンケート調査を実施した。アンケート内容は、これまで看護の対象者の方言を聞き取れなかった体験の有無や聞き取れなかった方言(語彙)、看護者が方言を使用することに対する思いなどであった。さらに、看護学生の調査から、学生の出身地域と現在の居住地域が同一である学生であっても方言を理解できない経験を有していることを明らかにした。看護を実践するために重要な「症状語彙」やその「程度」を表現する語彙を中心に、方言教育が必要であることが示唆された。 2年目は、教員の調査結果から、臨地実習における学生の受持ち患者の方言を聞き取れない経験を有しており、その方言は症状語彙に多く、地域では、東海、東北地域の教員に多かった。臨地実習という授業では、教員はその時々の再現性のない看護現象を教材化していく能力が求められる。対象者の話しことばである方言の理解は、現象を現実として捉え、意味を考えさせる教育のために看護教員が方言を理解する必要性が示唆された。また、各地の教員に、看護教育において方言を使用することに対する思いなど聞き取り調査を実施した。 3年目には、東北地域における看護教員の語りを分析し、地域の生活者である対象者をより深く理解するための一つのツールとして方言を意味づけしていることを明らかにした。また、津軽弁による訴えを理解する助けとなる看護教育教材を作成し、津軽地域の看護基礎教育養成機関や医療施設、看護協会、研究協力者へ配布し、公表した。
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