研究課題/領域番号 |
26463252
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
衣川 さえ子 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (90538927)
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研究分担者 |
高橋 正子 東京有明医療大学, 看護学部, 教授 (00259136)
岩本 郁子 東京医療保健大学, 看護学部, 准教授 (10728033)
梅津 靖江 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 准教授 (50709087)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 医療安全 / ノンテクニカルスキル / 静脈点滴管理 / 看護基礎教育 / トレーニングプログラム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は安全な医療を提供するために必要な、看護師のノンテクニカルスキルのトレーニングプログラムを看護基礎教育カリキュラムとして、開発することである。ノンテクニカルスキル(以下,NTS)は状況認識やコミュニケーション、肉体的精神的要因のコントロールを包含する、安全で効率的な課題の遂行に寄与する能力である。 研究は安全な医療提供に関わる看護師のNTSの特定、NTSのトレーニングプログラムの開発、有効性の検証へと段階的に展開する。初年度は、医療安全関する看護師のNTSの特定に取り組んだ。 1) NTSを特定する上で、静脈点滴管理に焦点をあてた。理由は与薬に関する医療事故の発生頻度が高い、周囲に同僚がいる中で看護師が患者の状況を判断し業務が遂行されるという、看護業務の特性を反映した典型例であることによる。 予備調査で熟練看護師4名に個別およびフォーカスグループインタビューを実施し、インタビューガイドを作成した。熟練看護師5名を対象に10月に、点滴管理における業務の安全性の判断と実践についてガイドを用い半構造化面接を行った。結果と先行研究・事故事例分析を統合し、「NTSカテゴリー」-「要素」-「行動例」から成る、点滴管理の『NSTリスト』を作成した。NTSカテゴリーは、「状況認識」「意思決定」「コミュニケーションとチームワーク」である。これを用いて実際にNTSを評価し、改善に役立てることができる。 2)『NSTリスト』を踏まえ、点滴管理における『安全チェックリスト試案』を作成した。「行動のち確認」する形で、見落としや誤りを発見できることを目的とした。リストは省略しがちであるが重大な影響を招く内容に限定し、16項目で構成した。看護師が①点滴準備終了時、②点滴交換の直前、③点滴交換の直後に用いる。 今後は素早く使用でき実用的という要件を満たすために、実際に臨床で試行し改良を図る必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標である、「安全な医療の提供に関する看護師のノンテクニカルスキル(以下,NTS)の特定」をするための展開は、当初の計画では以下のように設定されていた。(1)看護師のNTSに関係する行動の分析 (4月~9月)(2)看護師のNTSを構成する要素の分析 (10月~1月)(3)看護師のNTSの構成要素の確定 (1月~2月) 現在の達成度に至った要因は、以下の3点にまとめられる。 a)開発課題の焦点化:実施段階ではNTSを特定する上で、ローナ・フィリンらの「Safety at the sharp :a guide to non-technical skills」を参照し、看護師の医療安全に関する業務の典型として静脈点滴管理に焦点をあてた。使われる技術によりNTSは異なるというローナ・フィリンらの考えに従って焦点化したことで、研究範囲が明確となったことで効率的な研究推進につながったといえる。 b)データ収集法の変更:(1)において、熟練看護師による医療安全に関する看護実践を実際に観察し、行動分析法に基づいて分析する方法でのNTSの抽出には限界があると判断し、インタビューにより認知スキルや社会的スキルを質的に内容分析する方法に変更した。目標達成上、このデータ収集法の変更は意味ある分析データが得られたことから妥当であったといえる。 c)緻密な手法によるデータ収集:データ収集のために予備調査を行い、インタビューガイドを作成した。実際のインタビューにおけるガイドの活用によって、質的にリッチなデータが得られた。このデータがNTSの特定上、基盤となったことから、適切な手法であったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究において特定した、看護師による安全な点滴管理のノンテクニカルスキル(以下,NTS)についての、看護基礎教育におけるトレーニングプログラムを構築する。プログラムの構築では、以下の展開を予定している。 1)プログラムの開発と教材の作成 (平成27年4月~9月) (1)プログラムの構築:看護学生の学習ニーズを分析し、到達目標・内容・方法を検討し、プログラムを構築する。 (2) トレーニングで用いる具体教材の作成:トレーニングで使用する教材を開発し、作成する。 (3)開発したプログラムと教材の妥当性の検討:パイロットスタディの実施、及び医療安全管理者・新人研修担当者によるプログラムの評価・助言を得て、プログラムを修正し最終的に確定する。 2)プログラム評価に用いる測定尺度の検討 (平成27年10月~12月) プログラムによる、介入効果を測定するための尺度を検討する。効果を測定する尺度は、パフォーマンス評価に適した評価指標として開発が推奨される、ルーブリック(田中,2004)註)を作成し用いるものとする。課題遂行中のパフォーマンスを評価し、NTSを判定するツールを確定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
主な理由として、以下の点が挙げられる。 1)データ収集の方法を変更したために交通費と謝礼に関わる支出が予定よりも減じた。2)データ整理を研究者が実施したことにより、人件費の支出が大幅に抑えられた。3)関連学会への参加を予定していたが、業務の調整がつかず、取りやめたため、旅費が抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
使用計画は、以下の通りである。 1)前年度の研究成果を4th World Congress of Clinical Safety 2015で発表するための、海外出張に伴う旅費として使用する。2)トレーニングプログラムを考案し検討するためのデータ収集、およびプレテストを実施するためのデータ整理に関わる人件費が多く必要となる。3)データ収集に伴う、会場までの交通費の支出が必要となる。
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