研究課題/領域番号 |
26463254
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
酒井 太一 順天堂大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (50363734)
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研究分担者 |
鈴木 みちえ 順天堂大学, 公私立大学の部局等, 客員教授 (50300166)
岩清水 伴美 順天堂大学, 公私立大学の部局等, 先任准教授 (60516748)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アクティブ・ラーニング / 主体的学修 / 能動的学修 |
研究実績の概要 |
我が国の大学教育・看護基礎教育では学生の主体的学習が重要視されている。しかし、主体的学習態度・姿勢を測定する尺度(評価ツール)は小中学生を対象にしたものしかない。そこで、本研究では、講義・演習・実習などの授業において主体的学習態度・姿勢が強く求められる看護系大学生用の自記式主体的学習度評価ツールを開発し、これを全国の看護系大学に普及・活用させることを目的とする。 本研究のゴールは、大学での基礎看護教育における自記式主体的学習度評価ツールの開発とその公表、普及のためのシステム構築である。そこで、目標を主体的学習因子の解明、評価ツールの開発、成果の公表に設定した。2年目にあたる本年度は、尺度開発の基盤となる知見の整理、国内外の知見の集積状況の確認をし、評価ツール開発のために応用可能な知見の抽出及び現時点での課題を明確化することを初年度に引き続き取り組んだ。 具体的には、①看護教育学や教育学分野の文献に加え、近接する学問領域や応用できる知的生産技術に関する文献、今後の分析に必要となる文献などを広く収集した。また、②看護学系関連学会の他、教育学系学会、さらに多様な学問領域が交流できる研究会に参加した。今後は、これらの情報収集の成果を踏まえて質・量研究に取り組んでいく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度から本年度は、尺度開発の基盤となる知見の整理、国内外の知見の集積状況の確認をし、評価ツール開発のための応用可能な知見の抽出及び現時点での課題を明確化することに取り組んだ。その結果、次のステップであるインタビュー調査やアンケート調査を実施するための準備として踏み込んだ情報収集をすることで3つの知見を得た。まず1つ目は、学習における自己調整能力あるいはそのスキルという視点についてである。学習においても計画・実施・評価・改善のPDCAサイクルをコントロールすることが主体的学習をすることができるのではないかと考えた。したかって、主体的学習の論理的なモデルとしてPDCAサイクルをベースとすることが現時点では最有力である。2つ目は、学習という行為を学習者一人の単位で捉えるのではなく、学習集団としても捉えることの必要性である。学習は個人の中で完結するだけのものではなく、集団における関係性の中で意義を持ったり行われたりするものである。この点を如何に取り扱うかが課題である。最後に3つ目には、主体的な学習によって得られるアウトカム指標を何にするかということである。主体的学習はそれがなされること自体が目的であると同時に、それがなされることで得られるメリットや効果があるはずである。そしてそれは単に成績などに留まらないと考える。評価ツール(尺度)の開発の際に、それの併存的妥当性を検討するためにも類似した指標の他にアウトカム指標も追加しておく必要性がある。またそれを何にするかも熟慮しなくてはならない。以上の3つの知見に基づいて、質的調査(インタビュー調査)と量的調査(アンケート調査)を次年度の前後半のそれぞれで実施する。
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今後の研究の推進方策 |
3年目は、主体的学習を成立させる因子及び概念構造を、インタビュー調査を実施し、質的分析によって解明することで、評価ツールの理論的基盤を構築すると共に、主体的学習を促進させるキー・コンセプトの発見を目指す。具体的には、まず、これまでの情報収集から得た知見に基づき、半構成的面接用のインタビューガイドを作成する。その後、看護系大学の学生、1~4年生約20名に対してインタビューを行う。インタビュー・データは、異なる研究分担者による内容分析にて分析する。これらの成果は、日本看護科学学会、日本看護学教育学会等の主たる看護学系関連学会にて発表することを計画している。次に、インタビュー調査によって明らかになった主体的学習の構成概念に基づき尺度案を作成し、アンケート調査を実施する。因子分析などの統計的検討によって、自記式主体的学習度評価ツールを開発する。そして、最終年となる4年目では、学術論文において主体的学習尺度を公表し、さらに、自記式主体的学習度評価ツールを普及・活用のために、紙媒体による配布、インターネットブラウザ等によるダウンロードや入力・集計システムを構築し全国の看護系大学に提供することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
まず1つ目としては、参加した学会及び研修会の出費が抑えられたため。これらへの参加回数が諸事情により少なかった。さらに、参加したそのほとんどが東京近郊で開催されたため、交通費が抑えられたことはもちろん宿泊費を必要としなかった。2つ目には、計画していたインタビュー調査の実施ができなかったため、インタビューのテープ起こしなどの人件費を支出することがなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には2つの調査を実施するためその諸費用に充てる。また、調査の分析が完了次第、論文投稿などの公表も行うため、論文投稿に伴う諸費用の支出も予定している。
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