近年、冠動脈疾患患者の心理的問題が患者の健康に大きな影響を及ぼすことが明らかにされてきたが、その問題を解決するための援助に関する看護師への教育プログラムの開発と評価はほとんど行われていない。そこで本研究は、第 1 に、循環器看護に携わる看護師を対象とした教育プログラムの具体的実践に関する基礎調査を行い、冠動脈疾患患者のメンタルヘルスを支援する看護師の教育プログラムの内容・要素について分析を行った。第 2 に、臨床現場の看護師の認識について実態調査を行い、第 3 には、冠動脈疾患患者の心理的問題とメンタルヘルス支援に関する看護師への教育プログラムを開発した。 最終年度である今年度は、看護師を対象にこの教育プログラムを用いた介入研究を実施した。対象者は首都圏の病院に勤務する看護師で、対照群を設置しない非無作為化前後比較試験で、教育プログラムの評価を行った。プログラムは1日6.5時間で、集合研修形式とした。評価項目は、看護師の「知識」「態度」「技術」の3点とし、プログラム前、プログラム後、1か月後の測定を行った。分析には統計ソフトSPSS 24.0を用い有意水準は5%とした。調査は研究倫理審査委員会の承認を得て行った。 その結果、教育プログラムへの参加者は18名、看護師経験年数は7.5±6.9年であった。知識得点は3時点において有意な変化が認められた。技術に対する自信については、カウンセリング技法7項目中4項目が有意に増加した。以上のことから、本プログラムは、冠動脈疾患患者の心理的な問題に関する看護師の知識を変化させ、冠動脈疾患患者の看護への自信を高めるのに効果的であった。また、これらの知識や自信はプログラム終了1か月後も維持されていることがわかった。
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