研究課題/領域番号 |
26463259
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
野崎 真奈美 東邦大学, 看護学部, 教授 (70276658)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シミュレーション教育 / マネージメントシステム / フォーカスアセスメント / 教育プログラム |
研究実績の概要 |
平成26年度の目的は、コミュニケーション、観察、アセスメントに関する【教育プログラムの作成】と【点検管理をシステマティックに行うための作業工程一覧表(暫定的教育パス)の作成】である。各単元の目標と学習活動の決定、課題の設定を行い、実施計画を教育パスに表現した。システム運用上の危害分析 (Hazard Analysis; HA) を行った上で暫定的な標準的手順 (Standard Operation Procedure; SOP) としての教育パスを試作した。【教育プログラムの作成】では、看護過程に則ってコミュニケーション、観察、フィジカルアセスメントに関する看護技術をシミュレーションとして体験するよう学習内容を企画した。対象理解のための<生活支援に基づくフォーカスアセスメントの枠組み>の中から、焦点を当てる項目毎に目標を立て、学習内容を抽出し、単元構成を行った。生活支援に基づくフォーカスアセスメントの枠組みとは、1.生きる(最低限必要なニード)1)生命を維持する(呼吸困難、血圧異常、発熱、意識障害)2)食事する(嚥下困難、悪心・嘔吐、腹部膨満、貧血)3)排泄する(便秘、下痢、異常尿量、尿失禁)4)休息する(不眠、倦怠感)など。 2.身を守る(生活を営むためのニード)1)清潔を保つ(易感染、浮腫、褥瘡)2)運動する(運動麻痺、関節痛)3)知覚する(意識障害)など。3.自分らしさを保つ(自己実現に必要なニード)見当識障害、術後せん妄、頭痛などである。【作業工程一覧表(暫定的教育パス)の作成】では、食品管理のためのリスクマネージメントに広く用いられているHazard Analysis Critical Control Point (HACCP)をモデルとして、アセスメントから技術提供までの一連の流れに関する学習活動を、マネージメントシステムによって管理することにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
教育プログラムの骨子として、フォーカスアセスメントの枠組毎に代表的な問題について単元構築した。1)生命を維持するニードの阻害例として発熱、2)食事するニードの阻害例として嚥下困難、3)排泄するニードの阻害例として便秘、4)休息するニードの阻害例として不眠、5)清潔を保つニードの阻害例として易感染、6)運動するニードの阻害例として骨折部痛、7)知覚するニートの阻害例として神経麻痺、8)自分らしさを保つニードの阻害例として術後せん妄を取り上げた。今回は各ニードを阻害する代表例のみを作成したので、阻害例を増やしていくことは今後の課題である。 各単元の目標と学習活動の決定、課題の設定を行い、実施計画を教育パスに表現した後、システム運用上の危害分析 (Hazard Analysis; HA) を行った上で暫定的な標準的手順 (Standard Operation Procedure; SOP) としての教育パスを作成した。今回は単元および暫定的教育パスの骨子を作成した。学習内容の難易度と順序性を考慮して、単元の順序を検討は今後の課題である。 今回HACCPを教育現場に導入するために、7原則と5つの手順は看護教育用に次のように置き換えた。<HACCPの7原則>は、危害分析(HA)の実施、重要管理点(CCP)の決定、管理基準の決定、モニタリング方法の決定、改善措置の決定、検証手順の決定、記録の維持管理方法の決定からなる。<HACCP導入のための5つの手順(看護教育編)>には、教育プランの作成と教育専門家チームの編成、教育内容及び結果(アウトカム)の調査、結果判定のタイミングの推定、教育受講者のフロー図及び教育施設内見取り図の作成、フロー図及び見取り図を現場検証し、暫定的な標準的管理手順(Standard Operation Procedure; SOP)による管理の可能性を確認する。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は教材開発を行う。教材は課題ワークシートと学生版電子カルテ内の事例をさし、模擬患者、シミュレータを併用して状況を再現する。したがって、シミュレーション内容を決定し、順次事例(患者の状況設定)、模擬患者シナリオの決定、一部シミュレータの作成および電子カルテへの情報入力などを行う。 各事例の学習活動は、[導入・事例提示]→[事前学習]→[シミュレーション]→[自己評価]のステップで構成する。このステップが能動的な自己学習システムとなる。各ステップの教授案を立案し、作業工程一覧表(暫定的教育パス)に反映させる。各学習内容について電子カルテ内の情報提示、模擬患者、シミュレータのいずれの活動をさせるか教材を選択し、割り付ける。 教具の作成として、シミュレーション段階で用いる教具を事例毎に作成する。事例は難易度を変えて数例用意する。課題はワークシートで提示される。①模擬患者の準備 学習目的に合わせて、模擬患者の条件を設定する。シナリオ、模擬患者の事前訓練内容を決定する。項目として、会話、バイタルサインの測定、胸腹部のアセスメントを想定している。②シミュレータの開発 胸部のフィジカルイグザミネーション用の聴診用胸郭モデルを作成する。また、患者―看護学生の適切な会話を見極める練習問題は、動画を含めて作成し、コンピュータに搭載する。③学生版電子カルテの充実 学生版電子カルテに事例毎に基礎情報、治療方針、X-Pを含む各種検査データ及び看護記録ページに入院後の情報を設定し、入力しておく。④自己学習用ワークシート類の作成 シミュレーションの[事前学習]、[シミュレーション]、[振り返り]に必要なワークシート類を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は教材・教具の開発を計画している。特にフィジカルイグザミネーション用の胸郭モデルは、胸骨を基点として肋骨と肋間を識別し、聴診部位を探索できるように、形状および触感が人体に近いものが望ましい。安価なモデルの開発が目的であるが、既成品には適切なものがなく、初回の型取りから業者に特注する必要があり、ある程度の費用を要するため、平成27年度の教材開発費用を確保するために次年度使用額を捻出した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度使用額と合算して物品費(備品費)にあてる。
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