平成29年度の目的はこれまで作成した教育プログラムの評価を行うことである。本プログラムは電子カルテによって提示される事例を発端として、看護過程の思考を辿る中で、フィジカルアセスメントの習得、および患者とのコミュニケーションを振り返るものである。なお、これらの学習活動は各ステップで提示されるワークシートによって誘導され、自己学習と技術演習からなるブレンディッド学習といえる。授業の当事者である教員および学習者によるフォーカスグループインタビューによって評価した。今回はプロセスを評価するのに適したoutcomeモデルを用いた。学習者、教員、教材の3者について、input、process、outcomeの視点から、本プログラムにおける教授ー学習活動を評価した。マネジメントシステム(Hazard Analysis Critical Control Point; HACCP)を基盤にプログラムが構成されているため、各事例の危害分析(Hazard Analysis; HA)を通して学習の困難状況と阻害要因に早期に気づくことが可能であり、軌道修正の介入が容易である。教員にとっては安心して指導を進めることができるとの評価を得た。学習者について、本プログラムの特徴である学生版電子カルテを使いこなすには、学習者自身が情報を選別する能力を持っていること、学習進度は重要なポイント(Critical Control Point; CCP)において教員が判断するため学習者が自己決定できることが望ましいと指摘された。教材について、タブレット端末では持ち運びできるが画面が小さいこと、1台ずつ情報の更新・修正を行う必要があること、胸部モデルは聴診部位の確認には適しているが聴診には向かないこと、複数の模擬患者のセリフ以外の演技を統制するのは困難であることなど課題が示唆された。
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