研究課題/領域番号 |
26463268
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研究機関 | 園田学園女子大学 |
研究代表者 |
杉野 美礼 園田学園女子大学, 人間健康学部, 講師 (10434961)
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研究分担者 |
内藤 毅 徳島大学, 学内共同利用施設等, 教授 (60164109)
田代 麻里江 梅花女子大学, 看護学部, 准教授 (80336619)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 多職種 / 多文化コミュニケーション / 国際協力 / 災害保健 / 学校保健 / 人材育成 / 協働力 |
研究実績の概要 |
1.ネパール地震被災後調査:5月上旬に現地協力機関との調査予定を、2015年4月25日発生した地震後のカトマンズ周辺地域の被災状況調査に切り替えた。政府の対応不足で各国から届けられた支援物資が被災地に送られない中、現地の医療機関、民間人が独自で復興作業に取り組んでおり民間の対応能力の向上がみられた。2.2015年夏期ネパール学校保健プログラム:日本より情報工学、語学、看護学の学生及び行政若手職員4名と、ネパールより、看護学、医学、公衆衛生学、社会学、情報工学学生及び若手看護職者12名の多国籍、多職種チームを編成した。首都近郊のNGO経営学校及び村落部の公立学校に2か所において、歯磨きプログラムと身体・視力測定を行った。また情報工学の学生によるコンピューターのプログラミングクラスも同時に開催し、コンピューター教育への学習意欲向上を促した。身体・視力測定の備品は寄付し、測定値は学校付属PCに保管するようデータを入力した。半年に1回同様の身体・視力測定ができるように教員とともにプログラムを実施した。同年4月におこった地震の被害が大きかった村落部の学校では、同時に上級生を対象にPTSDの影響についてのアンケートを実施した。実施結果からPTSDの影響はみられるが、多くの子供が回復過程にあることが示唆された。 3.ネパール学生の日本研修旅行及び学会発表:ネパールより日本での保健医療機関視察のため看護学生、医学生、看護職者の3名を招聘した。2015年11月に開催された日本国際保健医療学会において、今年度の活動報告及び2014年に実施したダンスプログラムの研究報告について、発表を行った。研修チームは日本の公衆衛生研究施設、大学病院、看護学部、医学部の視察を行い、日本の医療と看護教育について研修を受け、ネパールでのこれからの学習や職場に日本の技術やシステムの適用を検討することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.学校保健プログラム:2015年の地震により現地協力機関が被災し、予定していた活動が半分できなかったが、あらたにコンピュータープログラムを加えることにより、活動内容を充実させることができた。被災後でインフラが整わなかったが、学生の積極的な活動により被災者となった住民の健康増進に貢献することができた。あらたに加えたコンピュータープログラムは今後の持続的な保健活動をめざし、学校のコンピューターで身体測定の記録ができること、生徒が自分自身でプログラムを管理できるようになることを、目標に、日本人チームが預かった被災地寄付金によりモニター、簡易ハードウェアを購入し、現地情報科学学部学生とともに学校で使用できるように設置し、コンピューター教育担当者と使用方法を確認した。日本チーム帰国後、コンピュータークラスではこのプログラムを継続して使用し、生徒の教材となっていることが報告されている。 2.ネパールからの研修チーム招聘:2013年度からネパール学校保健プログラムにかかわった日本の参加者から7名が研修活動をサポートし、ネパールチームとの交流を深め、この研究の目的である多文化理解と協働力の向上につながった。また日本の医療機関、大学に協力していただき、日本の医療サービスと医療設備、保健所での公衆衛生活動、医学部・看護学部での教育活動について研修を受け、将来の国際保健人材としての研鑽をつむことができた。学会発表ではネパールチームの研究活動をポスター発表によって報告し、国内外の学会参加者から高い評価をうけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.学校保健プログラム:健康教育と健康管理が学校の教職員と生徒によって持続できることを目標として2016年度のプログラムを実施する。ネパールチームのメンバーは継続しているが、日本チームは継続参加が難しいため、国際保健医療学会学生部会、研究分担者、研究協力者を通じて、新たな参加者を5名募集する。7月より日本とネパール間でスカイプ会議を行い、今年度のプログラムについて検討する。今年度はネパールチームがリーダーシップをとり、健康教育プログラムの内容、現地調整を行う。 2.コンピュータープログラム:ネパールですすめられているコンピューター教育活用し、コンピューターによる健康管理方法を導入して、持続可能な学校保健プログラムを目指す。協力学校では経済的問題でハードウェアやモニターなどが不足しているため、保護者および村落開発委員会の協力を要請し、地域での教育支援活動をすすめる。 3.ネパール研修生3名を招聘し、日本メンバーとの交流を深めつつ、協働力、多文化コミュニケーション能力を育成する。またネパールの保健人材の能力開発を支援する。 4.参加学生・若手専門職者を含めた研究活動を推進し、現地での保健活動の実施能力だけでなく、活動を発信する研究能力を育成する。現在行っているカトマンズ周辺地域の学校だけでなく、要請のあるネパール南部のヘトゥダ地方でのコミュニティヘルスプロモーションの研究活動を行う。 5.遂行上の課題:政府による復興支援がすすんでいないので現地での移動や通信に障害が多い。予備プランをたて計画変更に臨機応変に対応できるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
1・ネパール地震により遠隔地への移動ができなくなったため、首都周辺での活動となり、交通費支出が予定より少なくなった。 2.ネパール研修生の日本への招聘のため宿泊費支出を予定していたが、受け入れ機関の好意により宿泊費が必要なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
ネパールからの招聘する学生の人数を増やし、その旅費として使用する。
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