研究課題/領域番号 |
26463274
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
駒形 朋子(阿部朋子) 長崎大学, 熱帯医学研究所, 客員研究員 (70361368)
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研究分担者 |
佐藤 奈保 千葉大学, 看護学研究科, 講師 (10291577)
山本 あい子 兵庫県立大学, 地域ケア開発研究所, 教授 (80182608)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 災害看護 / 母子保健 / 園芸療法 |
研究実績の概要 |
本研究は、震災後様々な困難を抱えながら生活再建・地域復興の担い手としても活躍する子育て世代の人々を対象に、乳幼児を抱える家族が被災後どのような困難に直面し、どのような経過をたどったのか、どのような支援ニーズがあったのかを本人たちから詳細に聞き取ることにより、彼らの経験の全体像を質的に明らかにするとともに、ケースの集積から普遍化できる事実や経験、解決方法を抽出し、防災の共有財産とすることを目指している。H26年度は、参与観察(対象理解のために、現場の生活や活動に調査者自身が参加しながら情報収集を行うエスノグラフィーの手法)として、研究対象者の周辺環境を理解し、また関わりを深めながら情報収集を行い、翌年度のインタビューに進める状況を作ることを目標とした。先行研究等より陸前高田住民の遠慮深さや、健康や生活に関する「相談」に足を運ぶことにも非常に気を遣う社会であるとの情報を得ていたため、初年度は「できるだけ多く現地を訪問して、地域子育て支援センター等で希望されるイベントなどで楽しみ、周囲に気を遣わず育児や健康などの相談ができる機会を作る」活動を実施した。 まず、陸前高田市役所生涯学習課の乳幼児学級担当者、地域子育て支援センター子育て相談員より、イベントや講演等の希望について情報収集し、乳幼児学級での母親向け産後ケア、子どもの事故防止のセミナー実施、地域子育て支援センターでのフラワーアレンジメント教室と育児相談の同時開催イベントを年内に3回実施することを計画した。研究分担者のほか千葉大学看護学部の母性・小児看護学教員、園芸学部教員および学生の協力を得、セミナーは6月、7月、イベントと育児相談は7月、9月、11月、3月に実施した。 いずれも研究対象者候補である母親、子育て相談員らより非常に好評を得、また様々な健康相談に応えたこと等で、調査が可能な信頼関係が構築できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定したセミナー、イベント・育児相談はすべて実施でき、すべてが予想以上に好評を得ることができ、来年度の実施も計画できた。また、現地の人々の希望に沿ってフラワーアレンジメントを実施するにあたって園芸学部との連携が構築でき、園芸療法に基づいたフラワーアレンジメントを行うことにより、被災した人々の困難だけでなく、その困難を軽減する方策も考えることができる可能性が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度は、前年度の支援活動を継続しながら、構築された信頼関係に基づきナラティブインタビューによる詳細なデータ収集を展開する。平成27年度は現地での対面式のインタビューを実施する。記録した音声データから迅速にテキストデータを作成し、次回調査時に対象者による内容確認後、分析を行う。 1) 研究対象者:インタビューの対象は、地域子育て支援センターの利用者である乳幼児を抱える家族(母親、父親、祖父母・親戚などでおもに児に関わる人物)、および子育て支援に関わる官・民の団体職員等10名程度とする。 2)データ収集方法:データは、ナラティブインタビューにより収集する。ナラティブインタビューとは、あるプロセスについて自由に語ってもらう方法であり、対象者が体験した出来事やエピソードを引き出すのに適していると言われる。本研究では、乳幼児を抱える家族の被災後の生活のプロセスを明らかにするため、あえて質問項目を設けないこの方法を採用する。インタビュー時間は1回30分~1時間程度で対象者の負担にならない範囲とし、公民館等の一室等プライバシーが保護できる環境を確保する。音声データをICレコーダーに記録し、音声データからテキストデータを作成する。 3) データ分析方法:テキストデータを詳細かつ入念に内容確認しながら、同様あるいは類似した言葉/表現などから内容的に近いデータの切片を集め、カテゴリー化することにより対象者の抱える困難やニーズの方向性を推察する。カテゴリー化の段階については、田中らによるコード化の手法3を参考とし、災害エスノグラフィーにおいて標準化された方法を用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費が予定よりやや少額となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度は、予定に沿って陸前高田市を訪問し、支援活動と調査を実施する。 今年度打ち合わせ:7月、イベントと育児相談:9月、11月、3月、調査:9月~10月に研究チームメンバーで陸前高田市を訪問して、実施予定。
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