本研究は看護職者の職業被ばくに関する正しい知識や認識の程度と安全行動について明らかにし,就業改善への示唆および安全教育の基盤作りの資料を得ること,これらを基に教育プログラムを開発することを目的とした.研究は以下の二段階で実施した.平成26~27年度は質問紙による全国調査と放射線診療に携わる看護師へのインタビューを実施した。質問紙は439施設の看護職者4700名に配布し1374名から返信があった(回収率29%).結果から職業被ばく教育に満足しているのは25%程度で,実態は防護具の装着を省く者が0.5%,緊急時に省く者が30%存在した.また,組織側が十分な防護具を提供せず,管理者は看護師の不安に取り合ってくれないなど深刻であった.インタビュー結果からは防護具は重く他者の汗が付着して不衛生な状態であり,それらを長時間付けて働くことの負担を訴えていた.また,自分自身の知識不足が不十分な防御につながり,その結果被ばくリスクを増していると考えていた. 平成28~30年度は,これらの結果をもとに被ばく防護の研修会を企画・実施し,評価を行った.研修会は放射線技師と放射線診療に携わる看護管理者の講義,防護具装着や距離の測定などの演習で企画した.1回の研修は40名とした.前後に知識を問う質問紙調査を行い,研修会の効果を分析した.正答率は研修後に有意に上昇した.卒後教育で放射線診療に関する研修を受講した者は,受講していない者に比べて,専門的知識や具体的防護行動に関する知識が有意に高いという結果を得た.これらの結果から,研修会の講義内容を精選し,基礎知識を再確認できる内容に構成した.この成果は,今後も研修会として継続する予定である.
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