本研究の目的は、EPAによるインドネシア人看護師候補者の受け入れ施設の就労研修の現状および受け入れの事例調査等を行い、就労研修モデルを開発することである。 平成26年度から29年度にかけて、フィールド調査を行い事例研究をすすめていった。インドネシア人看護師の所属施設からの調査協力が得にくいこともあり、1施設での事例にとどまったが、継続的な参加観察によりデータ収集することができた。また、平成29年度にはインドネシアの規模の異なる3病院と看護専門学校1校でヒアリングと施設見学を行った。インドネシアでは平成29年度に保健省より専門職キャリアラダーシステム導入の指針が出され、看護師の継続教育が大きく変化していた。また民間の看護専門学校でのヒアリングでは、インドネシア国内の大学と専門学校、都市部と地方での教育内容や環境が大きく異なることがわかり、渡日する看護師が受けた基礎教育の内容や実践能力にも差が大きいことが考えられた。 平成30年度は、平成26年度~平成29年度にかけて行ったフィールド調査の追加として、看護管理者へヒアリングを行った。インドネシア人看護師候補者の組織社会化を促すためには看護管理者の働きかけとインドネシア人同士のコミュニティが鍵になっていた。特にトップマネージャーは、責任をもって職場内での支援を行うだけでなく、地域生活に適応するためにも手厚い支援を行っていた。インドネシア人同士のコミュニティのつながりの形成においてもトップマネージャーの媒介があり、これによって、インドネシア人看護師候補者が安心して生活できるようになり、安定した就労につながることが明らかになってきた。現段階では、現状把握にとどまり、就労研修モデルを開発することができていないため、引き続き分析を行い、モデルを開発していく予定である。
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