研究課題/領域番号 |
26463300
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研究機関 | 神戸常盤大学 |
研究代表者 |
畑 吉節未 神戸常盤大学, 保健科学部, 教授 (10530305)
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研究分担者 |
畑 正夫 兵庫県立大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40596045)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 災害看護 / ハイリスク在宅療養者 / 持続可能な在宅ケア / 訪問看護ステーション |
研究実績の概要 |
本研究は、甚大な被害をもたらす巨大災害が発生しても、在宅療養者が持続可能な在宅ケアを受けることができる仕組み・制度の構築に向けた検討を目的とする。研究の初年度である平成26年度は、災害時に健康状態が揺らぎやすい在宅療養者像を日常面も含めて健康・生活面で見える化するとともに、療養者を支える訪問看護ステーション等を対象に災害の備えを検討する基礎的資料の収集を行った。 第1に、在宅療養者・家族の健康リスクを明らかにするため、阪神・淡路大震災、東日本大震災等の被災地を対象に大規模災害を実際に経験した在宅療養者・家族の行動の分析を行った。具体的には、日本在宅ケア学会(2012)の療養者の分類をもとに常時医療機器・機具を使用する者を対象にインタビューを行った。在宅療養者と家族の語りから、ライフラインが途絶する中で療養者が直面する生命の危機的状況、発災直後の危機的な状況を乗り越えるための自らの力と近隣住民の力、セルフケア能力の重要性が明らかになった。また、訪問看護ステーションに勤務する訪問看護師の語りから、災害時の優先順位を付けた対応とそれを可能にする日常の備えの重要性、備えの中でマニュアル活用と実践力の強化のバランスを取る必要性、訪問看護師が訪問できない時間帯の療養者・家族の対応力の強化、対応を持続可能にする制度の必要性が明らかになった。 第2に、災害時には日常の健康リスクが顕在化すると考え、在宅療養者の日常の健康リスクの実態把握を行った。訪問看護ステーションでの24時間緊急連絡・相談対応に見る在宅療養者の健康リスクの分析を行った。緊急対応記録から、災害時にも共通する療養者の健康リスクと家族の介護上の課題を抽出したところ、装着した医療器具の離脱・閉塞、療養者の顕著な身体症状の悪化、家族の介護力の限界、判断が難しい身体状況の悪化等、療養者の健康の揺らぎに繋がる要因を抽出することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
阪神淡路大震災(兵庫県)、東日本大震災等(岩手県・宮城県・福島県・茨城県)の大規模災害に遭遇し、被災経験を持つ療養者・家族、訪問看護ステーション及び在宅療養支援診療所の関係者から災害時の医療ケアの実践についてインタビューを行った。インタビューは平成26年度に予定していた30名の関係者から概ね聞き取りを実施することができ、災害時の療養者へのケアに関する課題を抽出する基礎的なデータを得ることができた。 また、医療依存度の高い療養者が災害時に直面する健康リスクを日常から把握しておくために、在宅療養者の日常の健康の揺らぎをとらえた。兵庫県内に設置されたA訪問看護ステーションの協力を頂き、電話による24時間の緊急連絡システムを用いた緊急相談を受け、実際に訪問して対応したおよそ半年間の報告記録から、療養者の健康リスクと家族の介護上の課題を明らかにした。 災害時の健康リスクが高い療養者像を健康・生活面で見える化する貴重な資料を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
災害時に健康リスクが高い療養者像を幅広く捉え、健康・生活面を見える化するために、日本在宅ケア学会(2012)の療養者の分類をもとに、慢性疾患の安定療養期・リハビリテーション期及び急性増悪期の者、終末期で看取りの近者を対象に災害時の療養者像を明らかにする。平成26年度の研究成果と併せて、災害時ハイリスク在宅療養者像を描く。 また、平成26年度に調査対象とした常時医療機器・機具を使用する者も含め、被災者した療養者・家族が考える役立った事前の備え残った課題、また、今後の備えに必要なことについて、インタビューを行い、明らかにし、災害時ハイリスク在宅療養者像に適したケアの提供を考えるための基本モデル(骨格)を構築する。 その上で、得られた基本モデル(骨格)の熟度を高めるために、在宅療養者・家族、訪問看護師等で構成するフォーカスグループを設け、意見交換を行う。今後の巨大災害の備えに生かすため、南海トラフ巨大地震などの被災リスクの高い地域で活動する複数の訪問看護ステーションが扱うケースに当てはめ、基本モデルの適用可能性を検証する。 こうして得られる成果を分かりやすく伝えるために、特定の地域を対象に地理情報システムを用いて地図上で可視化する。
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