研究課題/領域番号 |
26463302
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
森川 浩子 福井大学, 医学部, 講師 (10313743)
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研究分担者 |
任 和子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40243084)
黒江 ゆり子 岐阜県立看護大学, 看護学部, 教授 (40295712)
大橋 健 独立行政法人国立がん研究センター, 中央病院, 科長 (40376463)
岡崎 研太郎 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90450882)
安田 宜成 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60432259)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 慢性腎臓病 / 透析予防 / ピアサポート「国際研究者交流」 / エンパワメント / 糖尿病劇場「国際研究者交流」 / 自己管理行動 / 心理社会的問題「国際情報交換」 |
研究実績の概要 |
【国際糖尿病連合が展開しているPeer Support around the World との連携】 1)2014年8月米国フロリダ州で第41回AADE(米国糖尿病教育者協会)年次集会において、国際糖尿病連合主催「Peer Support around the World」会合があり、研究代表者:森川が日本での活躍状況について報告した。また、NIH(国立衛生研究所)から出版されたNKDEP(National Kidney Disease Education Program)最新資料を入手した。2)2014年11月シンガポールで開催された国際糖尿病連合西太平洋地区会議において、研究分担者:任が、アジア地域における糖尿病ピアサポートの動向について情報収集を行った。 3)2015年11月国際糖尿病連合コングレスにおいて、"Don't be afraid of diabetes and CKD"; Psychosocial intervention program with Diabetes Theater based on peer support という演題を出した。 【糖尿病ピアサポート 立上げに向けての準備】 1)糖尿病劇場のシナリオ作成は、CKD併発した糖尿病患者(ピア)からのインタビューで行う。インタビューの進め方について、動機づけ面接法があり、参考文献をもとに、本研究班での方針について検討した。2)厚生労働省は、2013年「糖尿病透析予防指導管理料」として、該当患者への個人指導に対する医療費償還を開始した。重篤な糖尿病性合併症を併発した患者は、うつ状態や不安が強く、知識伝達型の指導だけでは行動変化に結びつかない。糖尿病劇場は、日本糖尿病学会編「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン(2013)」等に準拠し、ピアが行う自己管理行動を具体的に示す方向で進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【実施できた内容】国際糖尿病連合やNIHが糖尿病重症化予防に取組んでいるが、多くの国際糖尿病連合加盟国では厳格な血糖・脂質・血圧管理が不十分であり、末期腎不全から透析療法に至る患者が急増している。透析療法の費用は500万円/年要し、経済力の乏しい人々にとって死にいたる疾患である。本研究班は、国際糖尿病連合ピアサポート研究事務局(ノースカロライナ大学)と研究協力体制を持ち、本研究班が立ち上げる糖尿病劇場:Don't be afraid of Diabetes and CKD に大きな期待を寄せている。また、平成27年11月開催の国際糖尿病連合コングレスに向けて、本研究班から糖尿病ピアサポートに関する演題を送った。 【十分実施に至らなかった内容】当初の計画では、平成27年2月開催、日本糖尿病学会主催《第49回糖尿病学の進歩》に糖尿病ピアサポートについて教育講演をしたいと考えたが、平成26年8月の段階で準備が整わず見送った経緯がある。しかし、研究分担者:大橋・岡崎が《糖尿病学の進歩》世話人特別企画「糖尿病エンパワメントとコーピングを活かした療養指導」というワークショップを担当した。また研究分担者:任が特別企画「糖尿病教育と医療面接」の座長を務め、心理社会的な問題から、医療者に求められる役割について発言した。 糖尿病診療では、患者の問題解決能力を引き出すことが求められるが、加齢現象や合併症併発とともに、誰もが問題解決能力は低下する傾向にある。家族介護や社会的な介護事業に頼るのではなく、自己管理行動を維持するために、糖尿病ピアサポートが重要な社会資源となる。
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今後の研究の推進方策 |
【平成27年度の計画】平成27年9月5日(土)「糖尿病ピアサポート みんなで考えませんか」というテーマで、名古屋大学医学部第4講義室(300席)において、医療職者と糖尿病患者が同席し、《糖尿病ピアサポートとは?糖尿病劇場とは?》を共通認識するセミナーを開始する。本セミナーのポスター配布(300枚)は、平成27年5月21~24日、第58回日本糖尿病学会年次集会会場において実施する。また本セミナーでは、関連する資料を作成し、日本糖尿病学会・日本糖尿病協会・日本病態栄養学会等に送付する。 【糖尿病劇場のシナリオ作成】糖尿病ピアリーダーの方に、研究分担者がインタビューを行い、「糖尿病とCKD 運動をためらっていませんか? 」というテーマで仕事や家庭でどのように運動を行っているか、患者でしかわからない工夫や心配な点を聞く。ピアリーダーは、壮年期に糖尿病を発症したものの社会的役割が忙しく、十分自己管理ができなかったが、65歳以上の高齢期になり糖尿病性腎症を発症し、心理的不安を抱えながらも、安全な運動療法を継続することで、血糖・脂質・血圧の正常化を得ることができた患者に依頼する。2005年の時点で、慢性腎臓病患者数は1330万に及ぶが、末期腎不全は5万人であり、多くの慢性腎臓病患者は、適切な生活習慣改善と薬物療法によって重症化予防が実践できる。糖尿病患者は、病歴が長く、自己管理に対して無力感やバーンアウトに陥っていることが報告されており、糖尿病劇場という喜怒哀楽を込めた空間を提供することで、1)運動はどこでやれば快適なのか、2)共感的な動機付け、3)効果的なライフスタイル介入が期待される。ピアサポートの自己管理行動に対し、日本糖尿病学会編「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013」に準拠し、本研究班で糖尿病劇場のシナリオを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の研究計画では、研究代表者:森川と研究分担者:任、研究分担者:黒江が、2014年8月米国糖尿病教育者協会年次集会に参加する予定であったが、研究代表者:森川だけが米国出張した。また、研究分担者:任は、平成26年11月、国際糖尿病連合西太平洋地区会議に出席し、アジア諸国における糖尿病ピアサポートの活動を調査した。 そのため、海外出張の経費として、約50万円差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年11月 国際糖尿病連合コングレスに研究代表者:森川が発表予定のため、差額の一部を使い、研究成果報告を行う。また、当初の計画では、平成27年度に国際糖尿病連合ピアサポート研究班総括のエドウィン・フィッシャー教授(ノースカロライナ大学)を招聘する予定であったが、エドウィン・フィッシャー教授のもとで研究した西垣昌和准教授(京都大学大学院)が、糖尿病ピアサポートについて講演することになった。そのため、平成27年9月開催予定の【糖尿病ピアサポート みんあで考えませんか】のセミナー開催において、研究成果報告として資料作成をし、全国の主要な糖尿病基幹病院に発送する。また、糖尿病ピアリーダーにインタビューをするときに、録音機材などの購入を行う。
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