研究課題/領域番号 |
26463306
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研究機関 | 札幌市立大学 |
研究代表者 |
菊地 ひろみ 札幌市立大学, 看護学部, 准教授 (80433134)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多発性硬化症 / QOL / 認知行動療法 |
研究実績の概要 |
多発性硬化症(Multiple Sclerosis:MS)は、中枢神経系に脱髄性病変を生じ、時間的・空間的多発を特徴とする進行性疾患であるが、多くの症例で抑うつ、不安感、疲労感を呈し、患者の生活の質(Quality of life; QOL)を低下させる要因の一つとなっている。MS患者の抑うつや不安感、疲労感に対して、海外ではすでに認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy:CBT)が導入され、効果が報告されている。CBTは、対象者の認知面に働きかけることによりセルフコントロールを高め、そのことにより問題解決を助けるものである。本邦では、精神科領域で臨床看護も含めて広く導入されているが、MS療養者に対しては薬物療法が中心で、CBTの報告例はない。MS患者に対するCBTの効果が確認されれば、非薬物療法としてのCBTの可能性が高まり、入院患者に対する看護ケアの一つとして導入することも可能となる。 以上より、申請者らは、現在MS患者に対してCBTのパイロットスタディとして実施中である。 文献検討、プロトコル作成を経て、現時点で、協力病院に通院中のMS患者6名を対象にCBTを実施している。アウトカム評価尺度には抑うつ評価尺度CES-D(Center for Epidemiologic Studies Depression Scale)および、MS特異的QOL評価尺度FAMS(Functional Assessment of Multiple Sclerosis)を用いている。 中間評価で6名中4名の患者にCED-D上改善がみられ、3名にFAMSの改善が見られた。 今後さらにデータ収集を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CBTを実施する臨床心理士のリクルートに時間を要したことが主な理由である。研究者が研修を受けた厚生労働省マニュアルによるCBTのスキルを有し、かつ雇用条件に見合う臨床心理士のリクルートに6か月を要した。外来患者は外来日に合わせて月1回のペースでCBTを実施するため、一人当たりのCBTの期間が延長している。
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今後の研究の推進方策 |
現在6名の研究参加者にCBTを継続実施中である。今後さらに研究参加者を増やし、10名まで実施する予定である。 CBT実施前、中間、終了時のCES-DおよびFAMSの結果を分析し、CBTの効果とQOLに対するアウトカムを評価する。また、CBTを実施する際の課題等について、臨床心理士、研究参加者からヒヤリングを行い、プロトコルの修正を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
CBTを導入するにあたり、厚生労働省マニュアルによるCBTを実施するスキルを有し、研究代表者の提示する期間・頻度・実施場所に応諾する臨床心理士の確保に6か月間を要した。 また、外来患者は月1回の通院日に合わせてCBTを実施するため、一人あたりの実施期間が延長したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
現在の実施計画を継続する。CBT実施にあたり、担当の臨床心理士に対するスーパーバイザーを業務委託しており、パイロットスタディが終了するまで業務委託を継続する。研究参加者に対して謝礼を支払う。収集したデータの入力を専門業者に委託する。学会での成果発表、学術論文に投稿する。
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