研究課題/領域番号 |
26463322
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
長瀬 雅子 順天堂大学, 医療看護学部, 先任准教授 (90338765)
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研究分担者 |
青木 きよ子 順天堂大学, 医療看護学部, 特任教授 (50212361)
鵜澤 久美子 (桑江久美子) 順天堂大学, 医療看護学部, 助教 (50635167)
池田 恵 順天堂大学, 医療看護学部, 先任准教授 (50514832)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 |
研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン疾患は、原因の特定が難しく、治療法が確立されておらず、進行性で、将来的に身体機能や呼吸機能の維持が困難になる。そのため、病を宣告され、将来の見通しを告知された患者の多くが、「順風満帆だった人生が終わった」と感じ、絶望感や喪失感を抱きやすい。一方、医療技術の高度化によって生命を維持することができるようになり、ALS患者にとっての「人生の終焉」は、自らの選択に委ねられるようになった。このことにより、「よく生きる」とは何か「どこまで治療を続けるか」「どこまで生きるか」「いかに生きるか」という生きる意味や価値といった、いわゆるスピリチュアルな苦悩への視座が重要になっている。 ALS患者は、スピリチュアルな苦悩に対して、現実を肯定的に受けとめたり、新しい医療技術の開発に期待したり、「希望」を抱きながら生活している。一方で、「希望」は極限的で限定的な状況においてこそ、人間の本質として見いだされるものである。日本の医療システムでは、多様な選択肢を提示することが可能であり、患者や家族は自らの「望み」に従って治療を選択する。このような状況においてもなお、「希望」を見出すことは可能なのだろうか。 そこで本年度は、ALS患者が自らの人生の終焉に直面し、その終焉にかかわる意思決定をする過程で、どのような「希望」を見出しているのかを明らかにすることを目的に二次資料分析を行った。その「希望」は、患者に生を支えるものであり、支援者にとってはケアの目的にもなり得ると考えた。 分析結果からは、周囲の人々の存在や機能低下を補完する技術の進歩、医療技術の進歩、生きがいと言えるものの存在、支えとなる信念との出逢いなどが「希望」として明らかにされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、「神経難病医療拠点病院における患者・家族の希望を支える看護の実態と専門性」について、インタビュー調査を実施する予定であったが、日本と欧米の医療システムの相違と人々の意思決定/選択との関係について調査していたため、インタビュー調査に至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は人生の終焉に関する意思決定において見出される「希望」に焦点をあてて二次資料分析を行った。クリティカルなデータではないため、リアリティの不足は避けられない。一方で、本研究結果からは、「希望」の複雑性は明らかであるものの、心理的・実存的に概念規定した測定尺度の開発の可能性が示唆された。 次年度は、まずこれまでの研究成果について国内外の学会等で報告し、意見交換する。その上で、神経難病者へのエンドオブライフを見据えたケアの質を測る指標を作成するための研究に繋げていく予定である。その際、既存のHope Indexの他、エンドオブライフケアに関する質評価指標などを吟味していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度に実施予定だった、現地(英国と米国)調査が実施できなかった。また、国内でのインタビュー調査も実施できていない。そのため、助成金を使用することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度は、国際学会における成果報告とともに、会場での情報収集、インタビュー、ならびに意見交換を予定している。そのため、スペインでのICN大会やダブリンでのSTTI2017に出席予定である。さらに、12月には国際MND/ALS協会主催の年次大会で、様々な国の患者からヒアリングを行い、研究の発展に努力する。
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