研究課題/領域番号 |
26463326
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
三浦 英恵 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 准教授 (40588860)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 看護学 / 胸部大動脈瘤 / 外科的治療 / 回復 / 看護介入 |
研究実績の概要 |
平成28年度は前年度から課題となっていた、回復の見通しを示す支援と患者の病気認知との関連からのプログラム構成を検討した。また、治療形態(外科的治療、ステントグラフト内挿術、ハイブリッド手術)に依拠しない汎用性のある看護ケアの検討をするため、腹部大動脈瘤手術患者との差異と類似性の分析を行った。 腹部大動脈瘤(以下、AAA)手術患者6名(男性5名、女性1名、平均年齢69.6歳)と胸部大動脈瘤(以下、TAA)手術患者6名(男性4名、女性2名、平均年齢は65.0歳)の退院前(Time 0)、退院後1か月目(Time 1)、3か月目(Time 2)に行ったQOL尺度であるSF-36と半構造化面接の内容を分析した。Time 0~2におけるSF-36の各項目のAAA群とTAA群の得点には有意差はなかった。AAA群は、日常役割機能(身体):RP、社会生活機能:SF、日常役割機能(精神):REがTime 0と2の間で有意差があった(p<0.05)。TAA群は体の痛み:BPがTime 0と1および2のそれぞれの間で、心の健康:MHにおいてもTime 0と2の間で有意差があった(p<0.05)。AAA群の面接からは、SF-36の結果から示されたRP、SF、RPに関する問題は直接的には示されておらず、体力の低下の訴えや血圧値に関することなど療養に関する内容が多かった。TAA群の面接では、体の痛み(BP)を含む様々な身体的症状や変化に関する表出が多く、SF-36の結果と合致していた。 AAA手術患者に対しては、日常役割機能や社会生活機能の回復を支援することが重要であり、TAA手術患者は様々な身体症状を呈しそれに伴う体の痛み、その痛みが影響していると思われる心の健康を回復する看護ケアがQOLの改善に重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究の進行が全体的に遅れていたが、平成28年度は熊本地震があり、研究者の教育業務が「災害看護」であることから支援活動や多機関との調整等で業務多忙となり、更に研究遂行が難しくなった。研究全体の遅れに伴い、研究計画を見直し、当初の目的が達成できるように研究デザイン、研究実施場所の再検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画を見直し、回復促進看護支援プログラムに対して、医師、看護師等の専門家よりプログラム内容と実施時期を含めた現実との適合性に対する意見を聴取し、汎用性を高めたプログラムを完成させることを最終目標とする。低侵襲治療も発展し、患者の治療方法の変化に伴う回復状況の多様性も考えられる。治療方法に依拠しすぎない、看護ケアの本質を捉え、プログラム内容の簡便性、汎用性を重視したプログラムを完成させていく。そのためには、心臓血管外科領域に熟達した医師、看護師からの意見聴取が重要であると考える。今までの研究者が構築してきたネットワークと関係性を更に強化し、学会等での情報発信を含めて努力を続ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の全体的な遅れに伴い、最終年度の平成28年度は、熊本地震が発生し研究者の主となる教育・研究業務が「災害看護」であったこともあり、業務多忙のため研究の遂行が更に難しくなった。そのための研究計画も更に遅れる結果となり、補助時事業期間延長により研究を継続することになった。
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次年度使用額の使用計画 |
補助事業延長に伴う繰越金は1,003,409円である。物品費として9万円、学会発表、情報収集、専門家召集の旅費として28万円、専門的助言に伴う謝金・人件費として28万円、HP等での情報発信、通信費などのその他の項目は38万円の使用を計画している。
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