本研究の目的は、アクションリサーチによって、臓器移植医療での日常の看護場面で生じる倫理的問題に対して、看護師の倫理的実践がどのように変化するのかを明らかにすることである。 アクションリサーチは平成27年10月~平成28年10月に実施した。実施回数は11回で1回あたり2時間~2時間半であった。参加者は看護師、移植コーディネーター、大学教員の15名であり、移植コーディネーター1名と大学教員4名はファシリテーター役を担った。アクションの内容は、願いの明確化(1回)、実践を語る会(7回)、学習会(2回)であり、アクションリサーチ最終日に参加者全員を対象にグループインタビューを実施した。 アクションリサーチで最初に行った参加者が述べた倫理的実践に対する願いは、「異なる見方や幅を広げたい」「自分のかかわりに悩み疑問が生じる」「気づける力を身につけたい」「自分の倫理的な対応を客観視できれば」「無関心でいたくない」の5つが抽出された。事例検討会や学習会を通して、参加者は「参加することへのわくわく感」「実践したことをリフレクションでき、考えることが強化された」「現場に生じている倫理的な問題が何かを考えることが習慣化された」など参加者自身の気持ちの変化とともに、「患者や家族の情報を共有することの重要性」「患者サイドからみた実践の振り返り」「倫理的実践を導くツールを活用することの効果を実感(情報収集の大切さと患者理解の深まり)」「自分の意見を述べることの大切さ」「悩みながら考えること」「聞くことの大切さ」などが見出された。それらは、アクションリサーチを通して、参加者の倫理的実践に対する願いが変化したことを示すものであった。
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