透析患者におけるかゆみ(掻痒感)についての看護診断開発のために、先行調査で行った縦断研究の結果と文献レビューをもとに概念分析を行った。透析患者のかゆみは、その他のアトピー性皮膚炎や肝疾患などのかゆみと比べ、生理学的にかゆみメディエーターが異なることから、様々なかゆみを呈することが明らかになった。中枢性のかゆみについては、薬剤による治療が行われており効果を上げている。乾燥によるかゆみについては、日常生活に関する指導など、看護師のかかわりについての実践報告がされているが、検証研究はなされていなかった。 概念分析から、看護診断の診断指標・関連因子とされる項目が明らかになり、ACENDIO(The Association for Common European Nursing Diagnoses,Interventions and Outcomes )にて発表した。属性は、不快な感覚、掻く行動を伴う、かゆみには程度がある、かゆみには発生時期や持続時間がある、かゆみの場所の4つである。先行要件は大きく末梢性と中枢性の要因の二つに分けられ、どちらも透析治療に伴う生理学的要因が主な要件となっていた。とくに末梢性の要因において皮膚の乾燥は重要な先行要件であり、モデル例では乾燥が改善されることによりかゆみは軽減されていた。帰結にはかゆみの持続による不眠、仕事や家事など日常生活への支障があげられた。診断の定義としては「透析患者が感じるかきたくなる不快な感覚」、診断指標はかゆみの自覚(程度、発生時期、持続時間、場所を特定する)、関連因子としては透析治療に関連したかゆみメディエーターや皮膚の乾燥、不眠などがあげられた。 今後は、これらの診断指標や関連因子に対しての診断内容妥当性(DCV)検証を行い、看護診断および診断指標、関連因子の開発を行っていきたいと考える。
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