研究課題/領域番号 |
26463333
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
原 頼子 久留米大学, 医学部, 教授 (60289501)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 食事自己管理行動 / 運動自己管理行動 / エンパワーメント / 家族サポート / 心理社会的影響要因 |
研究実績の概要 |
糖尿病患者が合併症を発症せずに、良好な血糖管理を実施していくためには、患者自らが自分の抱えている問題に気付き、必要性を認識し、治療法を自己決定し管理していくというエンパワーメントの考え方が重要である(Anderson 1997)。これは患者が自らの問題に気付き、療養行動に責任を持ち、自らが必要ととらえたことを計画的に実施していくことで、自己コントロール感を持ちながら療養行動が取れることに意味がある。エンパワーメントアプローチ(Behavioral-Change Protocol:Anderson、Funnel 2004)でも言われているように、第一に患者が問題点に気づかなければ行動変容には至らない。その上で、患者が自己管理行動を継続することが、良好な血糖値の維持につながる。加えて、患者と信頼関係が築かれた医療者のチームによる身体的・心理的サポートシステムが重要であると考える。本研究では、簡易版調査票を使用し、早期に患者の抱えている問題に気付き、解決に向けた具体策を共に立案し、患者が自己管理していくことを支援することをエンパワーメント実践とし、その後の評価を行うシステムの開発を目的とする。 平成26年度は実用化に向けて、糖尿病患者用簡易版調査票の解析および精選を進める予定で、申請者の今までの研究より、糖尿病に関連する項目の絞り込みを行い、食事療法自己管理(4項目)、運動療法自己管理(3項目)、糖尿病を持つことによるインパクト(4項目)、家族の積極的関係(4項目)、家族の消極的関係(3項目)の糖尿病によって起こる症状を項目とした調査票を作成し、この解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度は、患者の現在の自己管理状況の把握や早期に問題点の明確化をするためにエンパワーメントを評価する調査票の開発を行った。分析の対象となるデータは、福岡県、熊本県の大学病院、中核病院の外来に通院する患者への調査から得た。糖尿病エンパワーメント調査票には、性別、年齢、治療法、現在の症状数、食事・運動自己管理行動、糖尿病を持つことによる心理的インパクト、家族のサポート(ポジティブ、ネガティブ)の側面が含まれている。この結果を分析することから、エンパワーメントへの、性、年齢、症状数の影響の特徴が見えてきた。男女共に年齢が高くなるほど食事・運動の自己管理行動が良く、糖尿病を持つことによるインパクトは女性のほうが高く、年齢が高くなるほど低くなっていた。また、家族のサポートは男性のほうがその影響を受けており、ネガティブなサポートは年齢が高くなると低くなっていた。この結果からエンパワーメントに影響する要因を多角的に検討し、調査票を開発する必要性を感じ、重回帰分析を追加した分析を行った。その結果は論文化し、雑誌への投稿を行った。考察した内容は、次の段階に生かせることになったが、予定していた時期からやや遅れが出てしまった。
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今後の研究の推進方策 |
面接実施者となる糖尿病ケア認定看護師あるいは糖尿病療養指導士の資格を持った看護師を対象に、エンパワーメント状態を評価し、問題点を見つけ、介入を行うときに使用する共感的理解や支持的面接のスキルの修得のための研修会を実施する。この研修会のスーパーバイザ―は、臨床心理学者に依頼する予定である。 研修会では、面接実施者である医療者自らが患者や家族の支持者となるよう、患者が最大限のエンパワーメントの実践を行えるような、環境作りの必要性を学び、患者の語る言葉を肯定し、共感的に耳を傾け自己コントロール感を抱けるように患者の体験に寄り添うことができる態度の形成についての学びを深める。 問題を抱える患者・家族に対して、研修を受講した医療者による共感的理解や支持的面接の実施を行う時は、患者が自ら抱えている問題について話すことで、気づきにつながるように、これからの方向性を共に考える場となるように関わるよう留意する。どのように解決に向かっていくかについて、具体的に患者・家族と共に考え、方法は、行動変化ステージや、患者のQOLに配慮した働きかけ(Testa MAモデル、1996)等を用い、体験がつらいものにならないよう患者家族と関係を築き、支援する態度で行う。並行して患者の身体状況は常に観察を行い、合併症の発症とみられる症状があれば、主治医に相談するよう指示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査票の開発と、その分析を論文に投稿していたため、実際の調査が次の年度になり、次年度使用額が増えている。
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次年度使用額の使用計画 |
具体的な調査計画は立てており、これからエンパワーメント実践、評価を進める予定である。
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