研究課題/領域番号 |
26463351
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研究機関 | 福岡女学院看護大学 |
研究代表者 |
八尋 陽子 福岡女学院看護大学, 看護学部, 准教授 (70584720)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | がん看護 / アドバンス・ケア・プランニング / 看護師 / 研修プログラム |
研究実績の概要 |
Advance care planning(ACP)とは,将来の意思決定能力の低下に備えて,患者・家族などの対象者と医療者が今後の治療・療養に関する価値観を共有し,ケアを計画する包括的なプロセスである。本研究ではがん患者へのACPの看護実践と関連する看護師の個人要因,施設要因,今後の課題を明らかにし,看護師を対象としたACP実践のための研修プログラムの開発し,それを緩和ケア認定看護師に実施することで有効性を検証することを目的とする。 平成26年度は全国の緩和ケア認定看護師を対象にACPの実践と,実践に関連する看護師の個人要因であるACPに関する研修の受講経験,ACPの重要性への認識等,及び施設の要因を問う郵送式の自記式質問紙調査を行った。 調査協力が得られた有効回答は331名(26.5%)であった。緩和ケア認定看護師の経験年数は平均5.1±2.9年であり,現在ACPを実践していると回答した看護師は222名(67.5%)であった。212名(64%)の看護師がACPに関する研修等の受講経験があり,288名(87%)の看護師がACPを重要だと認識していた。4ポイントのリッカートスケールで回答を得たACPの実践内容は,最尤法による因子分析を行った結果,6つの因子が得られた。各因子を目的変数,看護師および施設背景を説明変数として重回帰分析を行った結果,緩和ケア認定看護師の経験年数,ACPを重要だと認識していること,ACPに関する研修に参加した経験があること,緩和ケア病棟に所属している等がACPの実践に関連していた。 分析結果から,緩和ケア認定看護師がACPに関する知識や技術を獲得し,実践経験を重ねることが実践に関連していたことが明らかとなった。今後はチーム医療の中でACPの重要な役割を担う認定看護師が専門的な知識や技術を取得するための研修や教育を受ける必要があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は,緩和ケア認定看護師を対象にACPの実践状況と課題に関する調査を行うことが主な計画であり,おおむね計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度はACPに関する研修プログラムを作成後,緩和ケア認定看護師を対象に実施することでプログラムの有効性を検証する。そのため,27年度は研修プログラムの作成と実施,有効性を明らかにするための調査準備と調査を実施する計画である。 研修は,ACP実践の促進につながる内容(プログラム研修)とフォローアップ研修の2回を計画する。プログラム研修の内容は26年度の調査結果や文献等を参考に作成し,フォローアップ研修はプログラム研修終了から3ヵ月後に実施する。 プログラムの有効性を測定する調査は,プログラム研修前・研修直後・1ヵ月後・3ヵ月後の計4回行う。調査内容は,研修参加者の属性及びプログラム研修後のACP実践の変化,ACP実践への意欲,プログラムの実践への活用等を自記式質問紙によって調査し,各回の各項目の得点をt検定などを用いて分析する。 フォローアップ研修はグループワークを行い,ACP実践への課題と課題解決に向けた取り組み等を検討する。検討した内容をデータとし質的帰納的に分析を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は,全国の認定看護師を対象とした調査の準備や調査後のデータ入力を依頼する人件費を計上していた。さらに,発送時に同封する返信用封筒の全てに返信用切手を使用する計画で予算を計画していた。しかし,調査用紙の準備およびデータ入力を一括して企業に依頼したこと,返信用切手を使用せず料金後納の方法を選択したことで計画よりも低い費用となり次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度の予算の残額は,27年度の国際学会発表の旅費として使用する。また,27年度は緩和ケア認定看護師を対象とした研修会を2回実施する計画のため,会場費,講師への謝金,研修参加者への謝礼等で予算が必要となる。また,調査用紙の準備や発送,調査結果のデータ入力等で予算が必要となる計画である。
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