研究実績の概要 |
今年度は研修プログラムの作成と実施,プログラム評価の一部を実施した。 プログラム作成はガニエ(2007)のAnalysis Design Development Implementation Evaluation(ADDIE)モデルを参考にした.Analysis(分析)であるニーズ分析を行った結果, ACPの課題は「医療従事者の知識不足」,「ACPを導入するコミュニケーションの困難さ」等であった. Design(設計)は,研修目標を「がん患者のACPを促進するための課題解決過程を実践できる能力を養う」とし, 4つのModuleで構成し40-150分,1日間とした.Moduleは「ACPの概要と看護者の役割」,「ACPの法的・倫理的背景」,「ACPの話し合いをすすめるコミュニケーション」,「ACPの実際と課題」とし,各Moduleに目標を設定した.Development(開発)では,研修方法に講義やグループワークを取り入れ,日本の医療背景を考慮した教材を作成した. 研修プログラムは集合教育とし,参加者は60名であった(Implementation:実施). Evaluation(評価)は, Kirkpatrick(1979)の4段階評価を参考にした.第一段階のReaction(反応)ではプログラムの満足度を明らかにするため,研修終了後に自記式質問紙調査(5段階評価)を行った.第三段階であるBehavior(行動)は研修中に参加者が立案した行動目標について,3ヵ月後の達成状況を自己評価できるよう設計した.また,研修前と研修後のACPに関する看護実践を調査する設計とした. 研修プログラムが終了後,研修への満足度は「ACPの実際と課題」の平均点が最も高く(4.23±0.8),逆に低かったModuleは「ACPの法的・倫理的背景」で平均点が3.56±0.75であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アドバンス・ケア・プランニングは日本では導入し始めた段階であり,日本国内には看護師研修プログラムを作成するための資料がなかった.そのため国外のガイドラインや書籍,論文,研修会資料を取り寄せ,日本の医療事情に合致したプログラムと教材を作成する時間が必要となった.また,研修の対象は臨床で活動する認定看護師であるため,活動に支障のない時期を選択したことで研修実施時期とデータ収集期間が遅延した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,研修プログラム効果を評価する研修3ヶ月後の調査をWeb上で実施し,データを収集する.収集したデータはt検定やBonferroni型多重比較などの手法を用いて分析を行い,プログラム効果について検証する.結果の公表は国内外の専門学術集会での発表,および雑誌への掲載を計画している.
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次年度使用額が生じた理由 |
計画では,研修プログラムの実施に講師を招聘する予定であったが,日本国内では適切な講師が見つからず,プログラムは全て研究者が実施したため謝金や交通費が不要となった.また,研修で配布する資料印刷も研究者が作成したことで資料作成代が不要となった.
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次年度使用額の使用計画 |
今後は,研修プログラムから3ヵ月後のWeb調査のシステム構築,データ入力作業,国内外の学会発表の費用(翻訳,ポスター作成),さらに学会参加の旅費で使用する計画である.
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