研究課題/領域番号 |
26463369
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
安積 陽子 北海道大学, 保健科学研究院, 准教授 (40336847)
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研究分担者 |
長 和俊 北海道大学, 大学病院, 准教授 (10312365)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 睡眠 / 早産児 / 母親のメンタルヘルス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1)ADHDハイリスク群の早産児の多動性・睡眠障害を体動計で客観的に評価する方法を考案する、2)早産児の活動・睡眠障害と母親のメンタルヘルスの関連を明らかにすることである。 研究対象者は、正期産で出生した1歳半の健康な幼児25名と出生体重1500g未満で早産出生した修正1歳半の幼児25名とし、体動計を用いて児の活動・睡眠を評価する。 研究1では、早産児の多動性・睡眠障害の評価では、早産・正期産で出生した1歳半の幼児を対象に、体動計システムを用いて児の活動・睡眠を評価する。作業仮説「1歳半において早産児では、正期産児に比べ、多動性が認められ、睡眠障害の発症率が高い」を検証する。主要評価項目を、①夜間睡眠効率、とし出生体重の影響を評価する。また、副次評価項目を、②昼間の活動量、③心理発達検査指数(新版K式)とし、評価する。具体的には、児の活動量・睡眠発達を評価するため、24時間の活動パタ―ンを体動計システムで評価する。 研究2では、母親のメンタルヘルスを評価する。作業仮説「研究1においてADHDハイリスク群と判断された早産児の母親では、正期産児の母親に比べメンタルヘルスのレベルが低い」を検証する。主要評価項目を①夜間睡眠効率、としADHD発症のリスクの高い早産児が母親の睡眠に与える影響を評価する。また、メンタルヘルスを②抑うつ状態および育児ストレスのスコアとし、評価する。具体的には、母親の睡眠は24時間の活動パターンを体動計で評価する。メンタルヘルスは、エジンバラ出産後うつ病評価尺度(EPDS)、日本版PSI-SF実用版を用いて評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに得られた結果は以下の通りである。 27組の母子から研究協力を得た。その内訳は、正期産児16名、早産児11名であり、測定時点での修正月齢は、約45%が修正月齢18か月児である。性別は正期産群で女児6名、男児10名、早産群で女児10名、男児1名であった。早産群の在胎週数と出生体重は、29.8±2.6週、953.6±333gで、調査時点の身体計測値から、明らかな成長の遅れを認める早産児はいなかった。母親の平均年齢は35.4歳(±2.6)であった。家族構成は、21名(77.8%)が核家族であった。 研究1:早産児の多動性・睡眠障害の評価では、アクチグラフによる児の睡眠および体動評価の結果、昼間の平均活動量で群間で有意な差が認められ、正期産児の方が早産児よりも有意に活動量が多かった。また、その他の睡眠指標に群間による有意な差はなかった。そのため、夜間睡眠効率と出生体重の影響の評価は行っていない。しかし、アクチグラフから得られた睡眠指標と新版K式DQ値の相関係数を求めたところ、夜間睡眠時間は正比例の関係にある傾向が認められた。 研究2:母親のメンタルヘルスの評価では、EPDの得点はカットオフポイント値の9点を超える者はいなかった。PSIの得点は、子どもの特徴に関するストレス得点(以下、PSIC)と親自身に関するストレス得点(以下、PSIP)を算出し、それぞれの得点を正期産群と早産群で比較した。その結果、子どもの特徴に関するストレス得点は、早産群の母親のストレスが正期産群の母親に比して有意に高かった。現在、児の睡眠指標と母親のPSI得点の関係を分析している。 以上のように、データが蓄積され、早産児の睡眠と発達の関係や児の睡眠と母親のメンタルヘルスの関係を紐解く手がかりが少しづつ得られている。現在もデータ収集は順調に進んでおり、目標対象者数に達しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
研究1:修正月齢18か月児を対象とした本研究では、正期産児と早期産児の睡眠指標に有意な差を認めていない。本研究の目的は、睡眠指標からADHDの早期発見の手がかりを見出すことにある。そのため、この手がかりを見出すために、さらに詳細に得られた睡眠データをM-CHATおよび新版K式発達検値との関連から分析する。
研究2:現段階で、修正月齢18ヶ月前後の児を育てる母親には抑うつ傾向は認められなかった。しかし、育児ストレス得点を正期産群と早産群で比較すると、子どもの特徴に関するストレスの得点で早産児の母親の得点が正期産児の母親の得点よりも、有意に高いことがわかった。したがって、修正18ヶ月時点においても早産児の母親の方が正期産児を育てる母親よりも、子どもの特徴について不安や心配事を多く抱えている可能性があると考えられる。 母親のストレスを高める児の特徴の一つとして、本研究では児の睡眠発達に注目してい る。そのため、児の睡眠指標と母親の育児ストレスの相関係数を求めた。その結果、母親が認識している児の夜間睡眠が短いほど母親自身の育児ストレスが高かった。アクチグラフから得た児の客観的な睡眠評価と母親の認識している児の睡眠状況の相関は、起床時間や就寝時間といった睡眠スケジュールで正の相関が得られているが、夜の睡眠の質を示す睡眠指標では相関関係が得られていない。したがって、母親自身が抱えるストレスは母親が子どもの夜の睡眠をどのように捉えているかという主観によって影響を受けている可能性がある。現時点では、アクチグラフによる母親の睡眠評価が進んでいない。今後、アクチグラフによる児の睡眠と母親の睡眠データを蓄積し、母親の育児ストレスと子どもおよび母親自身の睡眠状態との関連を詳細に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年3月に手続きた旅費などに関して、支払い手続きが28年度となった項目がある。また、アクチグラフは追加購入したが、新しい機種購入に伴い必要となる物品(インターフェース)購入が遅れている。28年度にこれらの物品購入を完了させる予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
支払い手続きが28年度にまわった旅費以外については、アクチグラフ新機種に対応するインターフェイスの購入を予定している。
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