研究課題/領域番号 |
26463374
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
高田谷 久美子 山梨大学, 総合研究部, 医学研究員 (20125983)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ダウン症候群 / 父親 / きょうだい / 思春期 / 思い / レジリエンス |
研究実績の概要 |
対象はいずれも日本ダウン症協会山梨県支部の会員の協力を得て依頼した。父親および母親を対象にグループインタビューを実施し、きょうだいにはダウン症をもつきょうだいに対する思いについて作文を書いてもらった。 子どもが6歳~35歳までの父親10名にインタビューした結果を示す。1)生まれた当初のショックは大きい;2)就学に当たり、子どもに適した学校が選択できるよう、親の会でホームページを作りサポートすることの提案;3)子どもが高校生以上の6名中2名が退行を起こしており、どのようにしたら通常の生活に復帰できるかが問題であり、まだ高校生以下の子どもの親は退行を起こすか否かを心配し、起こさない工夫に関心を持っていた;4)2次性徴に付随する事柄を自分で対処できるようにするための工夫。男子については自分で対処。女子の場合は、母親が対処していたのでは、自立しないのできょうだいの力を借りるなどであった。 きょうだいの有無が確認できないため、きょうだいの総数については不明であるが、今回協力の得られたきょうだいは、10代から20代の7名(男4名、女3名)であった。書かれた作文から、きょうだいに対する思いの言葉を切り出し、意味づけを行った。その結果、7名中6名は、「ダウン症をもつきょうだいのやさしさ」が自分にとって良い影響を与えてくれたと、プラスにとらえていた。 アメリカ、ノースカロライナ大学チャペルヒル校のMarcia Van Riper博士に、全米での親の会とMarcia博士との関わり、および彼女の研究についての結果について確認した。その結果、1)親の会を通じての相談等、メールや電話でコンタクトをとり続けサポートしている、2)全米にダウン症を専門とするクリニックが約50存在しており、出生前から、また出生後は育児から始まりライフサイクルに沿い医療のみならず生活全般の相談に応じているなど明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダウン症児の親を対象としたグループインタビューからは、父親の障がいを持つ家族に対する思いと変容、障がいを持つ家族と暮らすことで工夫している点、役に立った支援や必要とする支援などは一部明らかになってきた。 また、きょうだいについても人数は多くはないが、障がいをもつ家族に対して成長過程では、なぜそのような行動をするのだろうかなど戸惑ったり、いらいらしたりなどの気持ちは持ちつつも、ダウン症をもつ家族の優しさによい影響を受けていた。ただし、年齢に応じて身近で相談できる人がそばにいることが重要であることも示唆された。そういったサポートがないと、きょうだい自身が自分の気持ちを整理できず、ダウン症をもつ家族に対する否定的な感情を抱いたまま成長していく可能性も示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
ダウン症児の親を対象としたグループインタビューでは、これまで実施してきたインタビューの結果をさらにまとめ、家族の特徴を父親と母親の結果を比較検討していく。また、これまでのインタビュー結果では不足していると思われる家族のレジリエンスについて、ことに、家族管理能力,コミュニケーション能力,家族や家族外からの支援,ストレス対処能力を検討することで深めていく。 今回のインタビューからでも子どもの自立については話題になってきており、次のステップとして、ダウン症をもつ子どもの親のみではなく、重度の障がいを持つ子どもの親とも比較検討しながら、障がいの違いによる特徴を明らかにしていくことで、障害をもつ子どもの社会参加に向けた支援のあり方を考える一助としていく。 きょうだいについて、作文の依頼を山梨以外にも広げていくことの検討。また、作文のみではなく、きょうだい同士がサポートし合うことができるように、まずは、きょうだいの会をつくり、それぞれの体験を話し合う機会を提供していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
きょうだいのいる家族の把握が難しく、当初予定していた協力者よりも少なく、協力者への謝金、解析に付随する支出がなかったため、予定金額より支出が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
きょうだいに関して、今年度は、作文のみならず、きょうだい自身の希望もあることから、きょうだい同士での意見交換会を発足させ、その費用に充てる。
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