研究課題/領域番号 |
26463382
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
福島 裕子 岩手県立大学, 看護学部, 教授 (40228896)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リプロダクティブ・ヘルスケア / 児童養護施設 / 思春期 / 女子 / 身体 / 受容 / 看護 |
研究実績の概要 |
1.ケアモデルの開発 児童養護施設の思春期女子を対象としたリプロダクティブ・ヘルスケアモデルを開発した。リプロダクティブ・ヘルスケアモデルは、Hermanの“心的外傷からの回復の三段階モデル”、DeciとRyanによって提唱された自己決定理論の下位理論である “基本的心理欲求理論”を手がかりとし、昨年度実施した後方視的調査の結果と各種文献を参考に開発した。ケアの構成要素は「“安心・安全の経験”を促すケア」「“自己の身体と性の知覚”と“基本的自己感覚の取戻し”を促すケア」「“自分の性や身体を大切にしていきたい”という動機を促すケア」の3つで、それぞれに児童養護施設で生活する思春期女子の特性に配慮した具体的なケアが含まれている。このケアは、集団へのアプローチではなく、定期的に継続した個別ケアであり、助産師と思春期女子の相互作用の中で展開する。助産師が母親のような存在になりながら児童養護施設の思春期女子をありのまま共感・受容し、女子自身の存在を認めていく事で“安心・安全”が経験さでき、女性である自分の身体や性は自分のものなのだと実感できることを目指し、開発した。 2.ケアモデルの検証 開発したリプロダクティブ・ヘルスケアモデルの検証のため、A県内の1か所の児童養護施設で試行を開始した。研究デザインは個別的・継続的介入による縦断的研究。ケア評価は現象学的アプローチを用いた質的記述的データを主とし、量的データで補完するMixed Method。研究協力施設はA県内の都市部にあるB児童養護施設で、施設長に保護者代理として女子の研究参加の可否を判断していただいた思春期女子4名を研究参加者とした。 個別ケアの実施は研究者が行い、平成28年2月からで、3月末までにそれぞれ4~5回のケアを継続実施できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定よりもケアモデル開発に時間を要した。しかし、Hermanの“心的外傷からの回復の三段階モデル”、DeciとRyanによって提唱された自己決定理論の下位理論である “基本的心理欲求理論”を手がかりとすることで、児童養護施設で生活する女子の特性に配慮したケアモデルを開発する事ができた。児童養護施設における性教育やリプロダクティブ・ヘルスに関する取組みは、集団を対象として性の知識の何をいつだれが伝えるか、についての追究はされていても、児童養護施設の子どもの特性、特に思春期女子の特性を加味し、そこに配慮した個別のリプロダクティブ・ヘルスケアの方策は確立していなかった。また、海外や日本において児童養護施設で医師や保健師、助産師などの医療専門職を活用する必要性は述べられているが、具体的な実践報告はまだない。本研究で開発したケアモデルは、児童養護施設で生活する思春期女子の特性を十分に加味し、助産師による個別性・継続性のあるケアモデルであり、学術的新規性を持つと評価できる。 また、児童養護施設において開発したリプロダクティブ・ヘルスケアモデルの検証を開始する事ができた。個別ケアのかかわりも良好で、研究参加者の女子たちと信頼関係を構築することができ、今後のケア介入によりさらに詳細なデータ収集が可能である。 以上のことよりおおむね順調に進行していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
児童養護施設で生活する思春期女子を対象に、開発したリプロダクティブ・ヘルスケアモデルの試行・評価をさらに継続する。平成27年度はA県内のB施設1か所であったが、さらにC施設にも協力を求めていく。研究参加者1名につき、半年ほどのケア介入を行いながら、途中自己記入式質問紙を用いて自己肯定感(田中の「自己肯定感尺度ver.2」を用いる)自分の身体や性の肯定感、女性の身体に関する知識の程度をVASで問うもの、を調査し、その変化からケアの評価を行う。 看護介入が終了したあと、研究参加者の同意を得て、個別のインタビュー調査を行う。非構造化インタビューとし、「児童養護施設で助産師と関わったり教えてもらったりした経験」や「その中で印象に残っている経験」を自由に語ってもらう。現象学的アプローチを用いて、助産師によるリプロダクティブ・ヘルスケアが対象女子の経験世界においてどう認識され、どのような意味を持つのか、現象学的アプローチにより質的に明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画通り執行した結果、4562円の残額が生じた。その理由は、当初の予定よりも、ケアモデル開発に時間を要したため、インタビューデータの逐後録作成や謝礼の金額が発せしなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度のデータ収集、分析等に用いる。
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