研究課題/領域番号 |
26463386
|
研究機関 | 長野県看護大学 |
研究代表者 |
阿部 正子 長野県看護大学, 看護学部, 准教授 (10360017)
|
研究分担者 |
宮田 久枝 園田学園女子大学, 健康科学部, 教授 (70249457)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 生殖医療 / 看護師 / 看護実践能力 / キャリア発達 / 外来看護 |
研究実績の概要 |
今年度は、生殖医療に求められる看護体制および看護者の専門性と役割について、過去の聞き取りデータの再分析と文献レビューを行った。 患者が望む医療体制の在り方については、患者同士で情報交換ができる場所、納得できる十分な説明による意思決定の手助け、努力に対するフィードバック、社会における不妊の認知度向上への寄与、心理カウンセラーの配置を期待していた。一方看護者が認識する役割は、医師-患者間コミュニケーションの橋渡し、不妊治療に関する専門的知識の活用、心理的適応の促進、社会資源の紹介・導入を、患者の目線に立って提供することであった。過去の看護師へのインタビュー調査では、看護師の個別相談担当の難易や場所の確保は大学病院、病院よりも診療所がフレキシブルに対応しており、場の特性が看護者の役割機能の発揮に寄与していた。しかし患者の自己学習を促進する機会の提供はどの施設にも認められず、社会への発信は努力課題と認識されていた。 患者の意思決定の手助けや努力に対するフィードバックを積極的に提供するといった看護ケア実践については、看護師の属性にある資格の種類や職位、認定資格の保有者、生殖看護の経験年数に影響を受けていることが複数報告されており、聞き取り調査においても裏付ける語りが認められた。それは同時に、看護ケア実践が施設内で統一されていない可能性も示しており、生殖医療に携わる看護者の教育の強化を検討する必要性が示唆された。すでに身近な事例検討会や自主学習会の機会の確保が、医師と患者間をつなぐ看護機能や、不妊と関連する職種・機関と協働する患者中心の看護の実践と関連することが報告されているため、次年度は、生殖医療における専門的看護を提供するための仕組みを構築する際に必要な構造、過程、成果に注目し生殖看護システムの構造を明らかにすると同時に、看護師個人のキャリア発達の様相を記述する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度実施する内容が最終年度にずれ込んでいる最大の遅延理由は、研究代表者ならびに共同研究者双方が予期しなかった家族の介護と学務の両立に忙殺されたことである。連携研究者との協働も学務を優先するあまり、十分にリーダーシップをとることができなかった。そのため、調査の遂行を協議する時間の確保やアンケート調査票の作成が進まなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
当初予定していたアンケート調査およびインタビュー調査は今年度中に実施すべく、研究補助者を雇用し、調査対象施設の抽出ならびに調査依頼を8月までに行う。得られたデータの入力は情報量が多く、入力することに困難が予想されるため業者に委託する。 実習期間が修了した1月~3月にインタビュー調査を行うが、期間に限りがあるため、インタビュー調査に協力してくれる参加者の状況を見て、今年度に実施可能な件数と本学からの距離を考慮して対象を絞りこみ、インタビューを実施する。文字起こしは業者の委託する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者ならびに共同研究者ともに予期しない家族の介護に忙殺され、調査が当初の予定通りに進まなかった。本来ならば実施予定だったアンケート調査ができずに予算を繰り越すことになった。
|
次年度使用額の使用計画 |
アンケート調査では300施設に対して施設管理者、看護管理者、スタッフそれぞれに調査を依頼するため、調査票・封筒の印刷、依頼文の送付、調査票の返信等におよそ20万円を見越している。さらに、データ入力には30万円の見積もりを計上しているが、回収率によっては見積もりを上回る可能性が否定できない。インタビュー調査は10名程度を予想しており、交通費、謝金、逐語録作成で30万円を計上している。 また、調査を遂行するための科研会議を隔月で定期的に実施するため、研究者2名の交通費と会議室の確保で15万円を計上している。その他、通信費、文献購入、翻訳等の雑費を計上している。調査の雑務を引き受けてくれる補助者の雇用についても考えていきたい。
|