本研究は、本邦に暮らす高齢化のすすむ外国人女性のリプロダクティブヘルスに焦点を当て、在日外国人女性が各々のライフコースにおいて、どのような医療保健行動を行ってきたのか、その医療保健行動の実践を明らかにすると共に、益々高齢化する女性達にとって、安心して高齢期を過ごすことを可能にするためには誰が何をするべきか、どのような保健医療制度が必要かを明らかにするものである。特に、「ニューカマー」と分類され、就労者として、日本人の妻として移住して20年以上が経過する、高齢化の著著しいアジア出身の女性たちに焦点をあてた。
本年度は、研究倫理審査を終え、関係機関への調整とヒヤリング、そしてネパールおよびベトナム出身で日本在住20年程度の40代から70代までの女性たちにそれぞれ聞き取り調査を実施した。 結果より、外国人女性のリプロダクティブヘルスが脆弱であることは明らかだが、背後には、日本と出身国の間の経済状況や社会福祉制度の差異と共に、日本社会においては「カマー(来訪者)」と位置づけられ、日本社会を支えて働いてきた老後を保障されるべき「中高齢者」とは位置づけされない社会構造上の問題があった。また、「外国人女性」として一括りにできるものではなく、永住者、ニュー・カマー、そして「就労」や「留学」の一時的滞在といった、在留背景によっても、医療保健行動の実践に大きな差異があることがわかった。 以上のことより、アジア出身女性の在留背景による医療保健行動の差異に焦点を当てて更に研究を発展させていく予定である。
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