研究課題/領域番号 |
26463395
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
山崎 圭子 東邦大学, 看護学部, 准教授 (50535721)
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研究分担者 |
丸井 英二 人間総合科学大学, 人間科学部, 教授(移行) (30111545)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 疲労感 / 高年初産婦 / 産後うつ病 |
研究実績の概要 |
昨年度の調査結果を踏まえ、今年度は母親の育児に対する「認知」と「行動」の観点から分析を行った。母親らが最も対応が困難な育児は、「児の夜泣き」であった。この現象について認知モデルを用いて分析した結果、「児が泣く=周りに迷惑になる」という自動思考が生じていた。様々な対処をしても児が泣き止まない時には、「私は母親失格だ…」といった媒介信念が作用し、育児全般に否定的な自動思考が想起されやすくなることが推察された。「産後の疲労感」尺度合計点とEPDS得点が高い母親(疲労感が強く抑うつ状態の母親)は、その人特有の媒介信念を有していた。 また、本調査の対象者である高年初産婦は、実父母の高齢化により出産後のソーシャルサポートが乏しい事例が多かった。特に、情緒的サポートが弱い事例では、周囲に助けを求めることができないという特徴がみられ、育児や生活全般を自分が取り仕切る傾向がみられた。この母親らは、疲労の原因は、夜間の授乳や夜泣きによる睡眠不足であると認識しており、否定的な自動思考や不安などの心理的な要因が疲労感を増強させているとは考えていなかった。 そこで、母親自身が産後の疲労感を客観的に測定し、自分の心と身体の状態を把握するために、「産後の疲労感」尺度を基盤とした「リチェックシート」を作成した。作成にあたっては、育児期の母親の負担にならないように、文字の大きさや回答しやすさ等について専門家と時間をかけて検討し、疲労の要因別の対処方法を加えてセルフケアにつなげることを目指した。今後は、リチェックシートによる母親のセルフモニタリングやセルフケアの実態を評価し、効果や課題を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26~27年度は、出産後から産後1か月までの高年初産婦の産後の疲労感と抑うつ状態の関連を明らかにするために、調査を実施した。この調査は、出産後、出産施設退院後1週間、産後1か月の3時点で、質問紙調査(「産後の疲労感」尺度、EPDS、STAI)、アクティグラフを用いた睡眠状態の観察、インタビュ―を実施した。継続調査に同意が得られた10名の「産後の疲労感」尺度合計点は、出産後の母児同室中が最も高く、時間の経過とともに軽減し、産後1か月の尺度得点が有意に減少していた。尺度合計点とEPDS得点は、有意な強い正の相関がみられ、抑うつ状態が軽減するか持続するかの分岐点は、産後2週間前後であった。これは、産後うつ病の発症時期と一致しており、産後うつ病を早期発見する上で重要な時期であることから、出産直後から産後の疲労感の推移を観察することにより、産後うつ病のリスクを有する母親のフォローアップに活用できる可能性が考えられた。 当初は、「高年初産婦の産後のケアガイドライン」の作成を予定していたが、これまでの調査結果から、最終年度は、産後のソーシャルサポートや生活の実態を踏まえて、母親の育児に対する「認知」と「行動」の観点から分析を行った。その結果、疲労感が強く抑うつ状態を有する母親は、周囲に助けを求めずに育児や生活全般を自分が仕切る傾向にあった。また、その人特有の強い媒介信念を持っており、否定的な自動思考が想起しやすい状況であった。否定的な自動思考を変容することは困難であるが、否定的な自動思考を誘発する産後の疲労感の増強を軽減させることは有用なケアであることから、母親自身が産後の疲労感をセルフモニタリングするためのツールとして、「リチェックシート」を作成した。
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今後の研究の推進方策 |
高年初産婦は、産後うつ病のリスク要因といわれている。わが国は、高年出産生割合が4分の1を超えており、今後、産後うつ病の増加が懸念される。現行の出産後の保健医療体制は、出産施設を退院してから産後1か月健診まで医療機関が中心となって経過を診ている。その後は、行政や地域がケア提供者となり、乳児健診や保健事業でかかわっている。しかし、産後の母親の死亡原因の第一位は自殺であり、産後4か月が最も多いことが報告されている。本研究は、産後1か月までの高年初産婦に焦点をあてて、産褥早期の疲労感と抑うつ状態の関連を検討してきたが、産後の母親のメンタルヘルスの実態を考えると、産後4か月までを視野に入れて検討する必要がある。今後は、産後の母親に広く活用してもらえるよう、産後1か月後の児の成長・発達に応じて変化する育児や、ソーシャルサポートの変化等による影響を反映させた「リチェックシート」の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度までの調査結果から、高年初産婦の抑うつ状態は、出産後早期から発症し、産後2週間目が症状の分岐点であることが明らかになった。その為、当初の計画であった「高年初産婦の産後ケアガイドライン」の作成を見直し、初年度に実施した「産後の疲労感」尺度を評価指標とした「リチェックシート」の作成を行った。これに伴い、当初予定していた調査およびスーパーバイズにかかる謝金等が不要となったため、使用額が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
「リチェックシート」の基盤である「産後の疲労感」尺度を、産後4か月までの母親に使用できるよう改訂を行う。具体的には、尺度項目の作成に向けたインタビュー調査を行い、その後、質問紙調査を実施して尺度の信頼性と妥当性を検討する。
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