本研究の目的は周産期女性のウェルネス向上を目指した妊娠早期からのケアシステムを提言することである。これまで妊婦のストレス状態は妊産婦の健康状態と関連があることを明らかにしてきた。すなわちストレスが高い妊婦に対する妊娠早期からのケアの重要性が示唆された。この研究成果を踏まえ,本研究は妊娠期からの継続ケアと妊娠経過や産後うつの関連を明らかにすることを目的とした。今年度は最終年度として,妊娠前半期からの継続ケアと切迫早産や産後うつの関連を分析した。 研究方法として妊娠前半期,妊娠後半期,産後1か月の計3回にわたりストレス認知の程度,Sense of Coherence短縮版(以下SOC),Edinburgh postpartum depression scale score(以下EPDS)を質問紙にて調査した。また基本的属性を妊娠前半期に,切迫早産による治療を受けていたか否かを妊娠後半期に調査した。またストレス関連物質として,先行研究で測定した分泌型免疫グロブリンA以外の関連物質の採用を検討したが,この点はアッセイ方法に課題が残された。 研究対象者は76名であったが,産後1か月時点まで継続調査が可能であったのは65名であった。そのうち,切迫早産との関連を分析する基準に合致したのは52名であった。 継続ケアとの関連がみられたのは,SOC高値群(≧60)において継続ケアを受けていた群はそうではない群に比べて切迫早産の割合が有意に低かった(p=0.011)。産後1か月時点のうつと継続ケアの関連はなかったが,妊娠前半期のSOC低値群(<60)では高値群に比べ,産後1か月時点にEPDS得点が9点以上である割合が有意に高かった(p=0.043)。すなわち,妊娠前半期のSOCを把握することの意義が示唆された。以上の最終年度までの成果について国際雑誌への論文投稿を終え現在査読結果待ちである。
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